第967回
中国で高まる嫌韓感情
北京の街でタクシーに乗ると
「お客さん、韓国人ですか?」と訊かれることが多いです。
北京に住む韓国人は日本人の10倍以上、
十数万人に上りますので、
中国語の発音がおかしい東洋人が乗ってきたら、
とりあえず「韓国人ですか?」と訊いておけば
だいたい当たるのです。
2005年に反日デモが起きた時期は
「お客さん、韓国人ですか?」と訊かれて、
「いえ、日本人です」と答えると、
車内の空気は一瞬にして凍りつき、
運転手さんが次に何と言ったらいいのか分からず、
かなりとまどっている様子がひしひしと伝わってきたのですが、
最近では「日本人です」と答えると明らかにホッとして
「日本は清潔でいいところらしいですなぁ」とか、
「日本の車は性能がいいのに安くてすばらしいですなぁ」
などと会話がはずむようになりました。
これは最近、日中関係が改善していることもありますが、
一方では、中国で嫌韓感情が急速に
高まってきていることも背景にありそうです。
以前は、中国でも韓国でも
「一番嫌いな国は?」というアンケートを取ると、
1位はダントツで日本でした。
韓国ではその状況は変わっていないようですが、
中国では今や韓国が日本を抜いて
嫌いな国ナンバーワンになっています。
中国人が韓国を嫌う理由は「文化を盗むから」。
中国で始まった端午の節句を
韓国がユネスコの世界無形遺産に登録したことを始めとして、
孔子や老子は韓国人だった、
漢方医学は韓国が発祥の地だった、
中国四大発明の1つと言われる活版印刷は
韓国人が発明したなどという数々の主張。
そして果てはソウル大学の教授が
「漢字は韓国人が発明した」という学説を発表したことなどが、
中国全土のネットユーザーの間に燎原の火のごとく広がり、
中国人の嫌韓感情を急速に高めたようです。
そしてこの嫌韓感情が表に出たのが北京オリンピック。
野球の日本×韓国戦で、
多くの中国人観客は韓国チームではなく、
日本チームに「加油!(じゃーよう、がんばれ)」の
熱い声援を送りました。
中国を「反日」の同志と考えていた韓国の人たちは
これを見て信用していた味方に背中から撃たれた様な
大きなショックを受けたらしく、
その後韓国のメディアが中国の嫌韓感情を
深刻な問題として頻繁に取り上げるようになり、
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が
憂慮を表明する事態にまで至っています。
漢民族が誇りとしている文化をことごとく
「韓国製」と言われて怒る気持ちは分かりますが、
中国の人たちは一方的に嫌うのではなく、
中韓共同で事実をはっきりさせるための研究を行うなど、
問題解決に向けての冷静且つ発展的な活動に
力を注いで頂きたいと思います。
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