第954回
中国の景気コントロール能力

先日、大手金融機関・クレディスイスが発表した
調査レポートの予測によれば、
中国の経済成長率は2008年は8.7%に止まり、
2009年には7.2%まで落ち込むであろうとのことです。

同社のシナリオでは、中国の経済成長率は年率ベースで
2008年10-12月は5.8%、2009年1-3月は6.0%、
2009年4-6月は6.3%と低迷を続け、
2009年7月以降は公共投資や各種緩和措置が
効果を表し始めて成長率が上向く可能性が大きいが、
今後3-5年は2ケタの成長ペースを
取り戻すことは難しいであろう、となっています。

中国は経済成長率が7%を下回ると、
十分な雇用の創出ができず社会の安定が保てなくなる、
と言われていますので、
中国経済がこのシナリオ通りに進むとすれば、
中国は今後1年間、
かなり危機的な状況に見舞われることが予想されます。

現在、中国株の株価は一時期よりは上昇したとは言え、
いまだ非常に低い水準にあり、
株価収益率(PER)や配当利回りで見れば
お買い得の大バーゲンセールが続いています。

しかし、こうした異常に低いPERや異常に高い配当利回りは
景気が良かった前期の収益や配当を基準に計算されていますので、
今後景気の減速によって
企業業績が悪化し収益や配当が低下すれば、
一足先に下落した株価に企業業績が追いついて、
PERや配当利回りが「正常」になってしまう可能性も
あながちないとは言えないような気がします。

しかし、こうした金融機関のアナリストが出す予測の盲点は、
中国を諸外国と同じような「普通の国」として
捕らえているところにあります。
中国は「普通の国」ではありません。
中国は共産党一党独裁国家であり、
政府が自国の景気をコントロールする手段を
「普通の国」よりずっとたくさん持っています。

経済成長率が7%を下回って失業者が巷に溢れ、
国内の治安が悪化するような兆候が表れれば、
中国政府は即座にあらゆる手段を使って
景気の下支えをするでしょう。

中国政府は先日発表した4兆元(57兆円)の
公共投資のスケジュールを必要に応じて
いくらでも前倒しすることができますし、
中国の中央銀行である中国人民銀行の周小川総裁は、
人民元を切り下げて一度殺しかけた輸出産業を
復活させる可能性も排除しないと言っています。

「普通の国」ではない中国では、
政府が自国の景気の浮き沈みをある程度まで
コントロールすることができるのです。


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2008年11月24日(月)

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