第952回
Made in Chinaが中国で買えないワケ
北京の物価は東京の1/4ほどですが、
デザインや品質が良くて値段が安いモノは、
明らかに東京の方が多いです。
現在、年間100万人の中国人が日本に行っていますが、
その主な目的がお寺でも温泉でもなく、
買物であるのも大きくうなづけるところです。
さらにその買うモノも以前は電化製品中心だったのが、
今では日用品や雑貨にまで広がっているようです。
中国人にとって日本は、
デザインや品質が良くて値段が安いモノが
たくさん売られている買物天国なのです。
しかし、中国の人たちが日本に行って
喜んで買っているモノの多くはMade in Chinaです。
中国の人たちは、なぜわざわざ日本まで来て
自国製の製品を買って帰るのか。
それは日本に輸出される
デザインや品質が良くて値段が安いモノは、
中国国内には流通しない仕組みになっているからのようです。
中国が「世界の工場」である時代は終わったとは言え、
日本で売られているモノは
その多くがまだ中国で作られています。
日本企業は日本国内の厳しい競争を勝ち抜くために、
中国側の工場に対し品質や価格について非常に厳しい要求をし、
その要求についてきた工場に
大量発注をしてその苦労に報います。
しかし、一般的に日本企業は
厳しい要求によって鍛えられた競争力のあるモノを
中国の工場が中国国内で販売することを許していません。
私も以前、日本で売られていたある製品が
Made in Chinaであることを知り、
その製品を生産している中国の工場に連絡をして
直接売ってもらおうとしたことがありますが、
「そんなことをして日本の委託元にバレたら、
輸出契約を解消されてしまいます」
という理由で断られたことがあります。
中国の工場がそうしたリスクを冒して
輸出用の製品を横流ししたものを売っているのが、
北京の街のそこここで見かける
「外貿(わいまお)」という看板を掲げた店です。
中国語の「外貿」という単語には、
「正規ルートで流通している国内向けのモノより、
品質が良くて安い輸出用のモノ」
という響きが含まれているのです。
ただ、こうした矛盾した状況も工場にとって、
日本向けの輸出より国内市場の方が魅力的になるに従って
解消されていくのではないかと思われます。
日本企業に鍛えられた
デザインや品質が良くて値段が安いモノが
中国国内で流通するようになる日も近いのかもしれません。
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