第871回
「愛国」と「反政府」のカンケイ
最近、中国では愛国の気運が高まっています。
フランスでオリンピックの聖火リレーが
妨害に遭ったことを受けて、
一部の民衆はフランス系スーパー・
家楽福(じゃーるぁふー、カルフール)をターゲットに
不買運動を行っています。
これに対してフランスの大使は
「家楽福で売られている商品はほとんどが中国製だし、
働いている人たちもほとんどが中国人なので、
不買運動は無意味だ」とコメントしましたが、
不買運動が収束する気配はありません。
本来ならば中国の愛国者の人たちは、
フランスの製品であるルイ・ヴィトンや
エビアンの不買運動をするべきなのでしょうが、
一度も買ったことがないモノに対して
不買運動はできませんので、
中国製の商品を売っているにも関わらず、
家楽福がターゲットになってしまうのでしょう。
こうした状況を前にして、中国政府は
「愛国の情熱は勉学や仕事に振り向けましょう。
何しろ冷静に、冷静に」と繰り返すばかりで、
事態を積極的に収拾しようという気迫が全く感じられません。
2005年の反日デモの時もそうでしたが、
いつもはあんなに自信満々で強硬な態度に出る中国政府が、
民衆が愛国を叫びだすと、一転して腰が引けてしまうのです。
日本のニュースでは
「愛国運動が反政府暴動に変わる可能性があるから」
と解説されますが、
「愛国」と「反政府」という一見正反対の概念が
どうしてつながってしまうのでしょうか。
この謎を読み解くカギは
「中国の民衆の心の中では、
「中国」と「中華人民共和国」は
必ずしも100%重なり合っているわけではない」
という事実があるのではないか、と私は思います。
彼らの心の中での「愛国」と「反政府」は、
ちょっとしたきっかけがあれば、
何の矛盾もなく両立する概念に成り得るのです。
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