第822回
今年のキーワードは「インフレ退治」

今年の中国経済のキーワードは「インフレ退治」です。

中国では昨年後半から、インフレによる物価高が
大きな社会問題となりつつあります。
中国の消費者物価指数(CPI)は
昨年5月以降上昇の度合いを強め、
8月以降は4ヶ月連続で前年同月比6%を超えています。

一方の労働者の賃金は、
平均で前年比7-8%上昇していますので、
一見、物価の上昇をカバーしているように見えますが、
平均では6%の物価上昇率も食品に限れば20%弱の上昇、
特に中華料理に欠かせない豚肉については、
前年比50%以上の大幅な値上がりとなっていますので、
今回のインフレは確実に一般庶民の生活を圧迫し、
生活レベルの低下を招いていると言えます。

昨年11月には、
重慶のフランス系大手スーパー・カルフールで
安売りの食用油に買物客が殺到し、
3人が死亡、31人が重軽傷を負うという事故が起きました。
インフレによる物価高で生活を圧迫された一般庶民が、
生活を防衛するために
少しでも安いものを買おうとしたことが原因となった
インフレの深刻さを象徴するような事件です。

このままインフレによる物価高が続くと、
一般庶民の生活がさらに苦しくなり、
その怒りの矛先が
中国共産党政権に向かう可能性もありますので、
中国政府としては現体制の維持という観点から見ても、
何としてでもこのインフレを退治する必要があります。

中国政府はインフレを引き起こす原因となっている
市中にあふれかえる人民元を吸い取るために、
昨年、6回の利上げと
10回の預金準備率引き上げを行いましたが、
インフレを沈静化させることはできませんでした。
人民元を吸い取る速度が、輸出の増加による
人民元の供給速度に追いつかないのです。

一番手っ取り早い方法は、
人民元を大幅に切り上げて、
輸出を減らすことなのですが、
輸出産業に従事する膨大な数の労働者が
失業してしまうことを考えると、
これはこれで大きな社会不安を
引き起こすことになってしまいます。

中国国家統計局、国家発展改革委員会は、
今年第2四半期には豚肉の供給が軌道に乗り、
下半期には物価は安定する、としていますが、
過剰流動性という根本的な問題が
解決する見込みは立っていませんので、
状況は予断を許しません。

中国政府はインフレを抑えながら、
輸出産業をソフトランディングさせるという、
難しい舵取りを迫られているのです。


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2008年1月21日(月)

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