第801回
中国政府が外資に期待すること

中国が従来、外国企業に期待していたのは、
中国国内に工場を作って雇用を創出し、
その工場で作った製品を海外に輸出して
外貨を稼いでくれることでした。

しかし、今や農村の余剰労働力はどんどん減少し、
沿海部の工場では人手不足が顕在化、
外貨準備高も2位の日本を大きく引き離して
世界第1位になりました。

これに伴い、中国政府が外資に期待することは、
従来の労働集約型輸出産業による雇用創出、外貨獲得から、
ハイテク、省エネ、サービス産業の振興へと
変わってきているようです。

先日、中国政府は「外商投資産業指導目録」を
ほぼ3年ぶりに改訂しました。(※1
この「外商投資産業指導目録」は、
外国企業や外国人の個人が
中国で投資したり起業したりする際の基準となるもので、
業種、製品別に「奨励プロジェクト」、「許可プロジェクト」、
「制限プロジェクト」、「禁止プロジェクト」に分かれています。
これを見ると、中国政府が外資に何を期待しており、
何をやってほしくないと考えているのかが
一目瞭然でわかります。

「奨励プロジェクト」は、中国政府が
「外資にぜひ入ってきてもらいたい」と考えている分野で、
業種、製品によっては様々な優遇政策が用意されています。
今回の改定では、従来のハイテク、新材料、省エネに加え、
ソフトウエア開発のアウトソーシングや
現代物流などのサービス産業が加えられました。

「制限プロジェクト」は、中国政府が
「外資にはできれば入ってきてほしくない」と考えている分野で、
投資に当たっては様々な制限が課せられるようです。
外資の助けを借りなくても、中国国内に
既に十分な供給能力がある業種などが該当します。

「禁止プロジェクト」は、中国政府が
「外資には絶対に入ってきてほしくない」と考えている分野で、
外資の投資は一切禁止されています。
国民の思想教育にかかわる新聞、テレビや、
国内で不足している希少鉱物の採掘などが該当します。

そして、上記3項目に記載されていないのが、
「外資は入ってきてもよい」という「許可プロジェクト」です。

中国に進出する日本企業や中国で起業する日本人は、
事前に必ずこの「外商投資産業指導目録」を見て、
自分が中国でやろうとしている業種が
「制限プロジェクト」や「禁止プロジェクト」に
分類されていないか、事前に調べる必要があります。

逆に言えば、中国政府が喜ぶ
「奨励プロジェクト」で起業すれば、
様々な優遇やサポートを受けられる可能性がありますので、
中国で興す事業がまだ決まっていない方は、
「奨励プロジェクト」のリストを見て検討する、
というのも一つの手かもしれません。

※1http://news.cnwallstreet.com/2007-11-07/84374.html


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2007年12月5日(水)

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