第793回
「今、マンションを買わなくていつ買う!」
北京の新築マンションは、既に、
一般庶民が買える値段の限界を突き抜けてしまっています。
現在、北京の東の郊外、四環路と五環路の間に
続々と建設されている新築マンションの値段は、
平米15,000元(240,000円)前後。
北京にはワンルームマンションや
小さいマンションはほとんどなく、
一番小さくても2LDK、建築面積100平米
(使用面積70平米)ぐらいのものなのですが、
それでも平米15,000元だと150万元、
日本円で2,400万円です。
一方の一般庶民の収入ですが、
増加傾向にあるとはいっても、
30代中間管理職で月給5,000元(80,000円)程度。
妻も同等の収入があるとすれば
世帯収入は月10,000元(160,000円)になりますが、
中国企業の慣例である年末のダブルペイを含めても
年収は13万元(208万円)にしかなりません。
日本では「買えるマンション価格の上限は年収の5倍」
とよく言われますが、北京の場合、
150万元のマンションは年収13万元の約11.5倍。
新築マンションは一般庶民には
かなりの高嶺の花であることがわかります。
さらに、バブルを沈静化させるために、
中国政府は今年に入って既に5回も利上げをしていますので、
住宅ローン金利も8%近くまで上がってしまっています。
もし、150万元全額を年利8%の住宅ローンを借りたとすると、
1年間に支払わなければならない金利は12万元(192万円)。
年収のほとんどを金利支払いに回しても、
150万元の元本は減らない、
という借金地獄に陥ってしまいます。
そんな状況でも一般庶民がマンション購入に走るのは
「マンション価格と金利がこれ以上上がったら、
永遠に家を買えなくなってしまう」という超悲観的な感情と、
「買ったマンションが値上がりすれば、
借金を返しても一財産残る」という超楽観的な感情が、
「今、マンションを買わなくていつ買う!」
という共通の結論を導き出すためです。
このため最近では、新築マンションの販売センターに、
売出日前日から徹夜組が並んだり、
「並び屋」なる商売が生まれたり、
抽選にはずれた人たちが暴れ出して警察が出動したり、
とちょっと尋常ではない状態が
市内のそこここで発生しているようです。
日本のバブル経済の異様な熱気を体験している私から見れば、
今の北京のマンション購買ブームは
危険極まりない異常な状態なのですが、
バブル初体験の中国の人たちにとって
新築マンションの買付当たりくじは、
自らの人生を切り開く
「必ず当たる宝くじ」に見えるのかもしれません。
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