第741回
キーワードは「インフレ抑制」
中国政府がインフレを抑えるためには、
まずは市中にあふれる人民元を
減らさなければなりません。
このためには輸出を減らし、
輸入を増やす必要があります。
特に、中国の外国為替制度は、
外貨準備高を積み上げたかった昔の制度のままですので、
輸出によって得た外貨は全て国庫に納められ、
輸出者にはその外貨相当の人民元が支払われます。
日本のように企業や個人が、
外貨のままで持っていてもよい制度ならば、
まだよかったのですが、
この制度だと輸出代金が全て
人民元に換わってしまいますので、
貿易黒字が増大すると、
その分ストレートに市中に出回る
人民元が増えてしまうのです。
輸出を減らし、輸入を増やすのに、
一番手っ取り早い方法は、
人民元を大幅に切り上げて
中国製品の輸出競争力をなくすことです。
しかし、そんなことをすれば、
中国の輸出産業は壊滅的な影響を受け、
大量の失業者が発生し、
これもまた治安を悪化させる原因となります。
このため、中国政府は管理フロート制という、
なんだか中途半端な制度で
年間5%ぐらいのペースで緩やかに人民元を高くして、
その間に自国の輸出産業に
元高になっても生きていける競争力を
付けさせようとしているのです。
しかし、年間5%の元高では
貿易黒字は減るどころか増えつづける一方、
インフレ圧力は高まるばかりです。
そこで、中国政府は今年に入って
2回の利上げと5回の預金準備率引き上げを行い、
市中の人民元の吸い上げを図りました。
中国政府は更に、
7月1日から一部輸出品の輸出税の還付を削減し、
中国製品の輸出価格を最大で17%値上げさせ、
その競争力を殺ぎました。
また、市中にあふれる人民元の投資先が、
国内の不動産か株しかなく、
一方の過熱を抑えるともう一方がバブルになる、
ということがわかった中国政府は、
中国の一般の投資家が指定金融機関を通じて、
海外の株式に投資できるようにしました。
当面は香港市場のみですが、
将来的にはニューヨーク市場、東京市場などにも
投資できるようにするそうです。
こうして見ていくと、
「インフレ抑制」をキーワードに、
今後、中国が進んでいく方向が
かなりはっきりと見えてきます。
「輸出競争力低下」、「輸入奨励」、
「人民元高」、「人民元金利上昇」、
「中国株と不動産の乱高下しながらの上昇」、
「中国個人マネーの海外流出」などなど。
私たちはそうした大きな流れを見極めて、
うまくおカネが流れるところに
立つようにすればよいのです。
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