第725回
「フカヒレスープ」が飲めなくなる日

中国が誇る高級料理の一つ「フカヒレスープ」が、
今後、飲めなくなる可能性が出てきました。

アメリカの環境保護団体「ワイルドエイド」は最近、
アメリカプロバスケットボールのスター・
姚明(やおみん)を起用して、
中国でサメの保護意識を高めるための
テレビ公共広告を流し始めました。
世界のフカヒレの半分以上を消費する中国で
人々がフカヒレを食べなくなれば、
サメの保護に大きな効果があるだろう、
という狙いのようです。

ある調査によれば、多くの中国人が
「フカヒレ」と「サメ」の関係を知らず、
「次第に数が減っているサメは保護するべきか」
という質問にイエスと答えた人が、
その晩には平気で「フカヒレスープ」を飲む、
という状態であるようです。

このため「ワイルドエイド」は今後、
「フカヒレはサメから切り取られる」、
「ヒレ以外は捨てられる」、
「フカヒレには栄養価はあまりない」といった
事実の啓蒙をしていくものと思われます。

環境保護団体の方々には申し訳ないのですが、
私は中国に来てから、すでに何十杯もの
「フカヒレスープ」を飲んでしまいました。

しかし、今から思い返してみれば、
フカヒレはそれ自体に味はなく、
何しろ「フカヒレスープで接待された」
という事実が大切だったように思います。

丸紅時代、上司のお供でお客さんの接待のために
銀座のスナックに行った時に、
「なんでこんなばあさんが
1人でやってるカウンターバーで
1人5万円も取られるんだ!」
と思ったことがありますが、
これもフカヒレと同じで、
「お客さんを銀座で接待した」
という事実に意味があるんですな。

アメリカの環境保護団体のキャンペーンが効を奏して、
中国国内で「フカヒレで接待なんて、そんな非常識な...」
という空気が醸成されれば、
今後、「フカヒレスープ」が飲みにくい世の中に
なるのかもしれません。

ま、中国でも「フカヒレスープ」を飲まないと
居ても立ってもいられない、という人は
あまりいないとは思いますが、
日本のクジラと同じで、
西洋人から伝統的な食文化を否定されることに
抵抗を覚える人は少なくないのではないでしょうか。


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2007年6月11日(月)

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