第715回
中国の右肩上がり神話
中国は改革開放政策を開始してからこの30年で、
経済成長率が7%を下回った年は、
天安門事件後の1989年、1990年など3年間しかありません。
その3年間もマイナス成長ではありませんので、
大部分の中国の人たちの頭の中では
「経済というものは、右肩上がりで上がっていくものだ」
というのが既に常識になっています。
経済が右肩上がりで上がっていく世の中では
「投資のタイミングは早ければ早いほどよい」
ということになります。
このため、今回の株式投資ブームに乗った
上海の股民(ぐーみん、株式投資家)のみなさんも、
海外旅行に行くおカネも残らないぐらい、
資産の大部分を株式投資に
突っ込んでいるのではないでしょうか。
私は、日本のバブル期に高値で買った株や不動産が暴落して、
人生を狂わせてしまった人の話をたくさん聞いていますので、
中国の人たちに「経済というものは、
右肩下がりになることもあるんだよ」という話をするのですが、
彼らからは「不可能(ぶかなん、ありえない)」と
一蹴されてしまうのです。
不動産への投資が厳しく規制される一方、
不動産より手軽な投資対象として
中間所得層が海外旅行を我慢してまで投資する中国株は、
今後も堅調に株価が上昇していくことが予想されます。
しかし、中国の人たちがみんな海外旅行に行かずに、
そのおカネを旅行会社の株を買うのに回すような事態になると、
中国の株式市場は、企業業績がそれほど良くないのに、
先高期待で株価ばかりが上がる、という、
いわゆるバブル状態に突入する恐れもあります。
実際、中国人民銀行の周小川総裁は、
今月、スイスのバーゼルで開催された
国際決済銀行定例中央銀行総裁会議の席上で、
中国株式市場のバブル状態について
懸念を示す発言をしています。
上海株価指数は2006年初めから現在まで
200%以上上昇しているそうですが、
その間の中国の経済成長はせいぜい10%ですし、
利益が200%以上増加している企業も
そんなにあるとは思えません。
それでも、「経済というものは、
右肩上がりで上がっていくものだ」というのが常識で、
「投資のタイミングは早ければ早いほどよい」
と考える人がたくさんいる限りは、
中国株の株価は先高期待で
上がっていくものと思われます。
しかし、多くの人が「これPER高すぎるよね」
と気付いた時点でバブルが崩壊し、
株価が適正水準まで落ち込む、
なんてこともあながちありえない話ではない、
と日本でバブル崩壊を間近に見ていた私は思うのです。
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