第711回
「一分たりともやるもんか!」

中国のお金の単位はみなさんご存知の元(ゆえん)です。
しかし、会話の中では一元(いーゆえん)とは言わず、
一塊銭(いーくゎいちぇん)と言います。
今では一元(15円)では、お粥の一杯も飲めませんが、
昔は結構大きな「塊の銭」だったことがわかります。

元の下の単位は、角(じゃお)です。
十角で一元になります。
これも会話の中では一角(いーじゃお)とは言わず、
一毛銭(いーまおちぇん)と言われています。

そして、角のさらに下の単位は分(ふぇん)です。
十分で一角になります。
分は会話の中でも一分銭(いーふぇんちぇん)と言うのですが、
日常生活ではほとんど使うことのない通貨単位ですので、
会話に出てくるとすれば、遺産相続の争いで、
欲の皮の突っ張らかった後妻が、
「一分銭也不給!(いーふぇんちぇんいえぶげい!、
一分たりともやるもんか!)」と叫ぶ、
などという場面に限られます。

分には「一分」「二分」「五分」に
それぞれアルミ硬貨と紙幣があったのですが、
先月1日をもって、分の紙幣が流通停止となりました。

私の手元にも数枚の一分紙幣があるのですが、
もう使えなくなってしまいました。
ま、一分は日本円で0.15円ですので、
たとえ100枚あったとしても
15円の損失にしかなりませんが...。

一分紙幣

分紙幣は1953年に流通が開始されました。
上の写真は一分紙幣です。
大きさは100元札の1/4ほどで、
単色印刷にトラックの絵柄。
まるで、子供がお店屋さんごっこで使う
子供銀行のお札のようです。

ある年齢以上の中国の人たちは、
子供の頃にこの一分紙幣を握り締めて、
あめ玉を買いに行った、という記憶があるそうです。

ただ、いくら中国は物価が安いといっても、
現代の中国では一分で買えるものは
なくなってしまいました。
中国は高い経済成長率の割には、
インフレをうまく抑えていますが、
それでも昔に比べれば
貨幣価値は随分と下がっているのです。

今回は、紙幣の流通停止のみでしたが、
分という貨幣の単位自体が中国からなくなるのは、
時間の問題なのかもしれません。


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2007年5月9日(水)

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