第704回
買えば天国、働きゃ地獄

先日、久しぶりに日本に出張してきました。
その際に、前回日本に行ったときに飲んで
「これはおいしい!」と思ったビールを買いに
コンビニに行ったのですが、
どこのコンビニに行っても置いてありません。
あるのは初めて見るビールばかりです。
どうやら私が飲みたかったビールは、
数ヶ月の間に新製品に
取って代わられてしまったようです。

一方の中国では、何年も何年も
同じ銘柄のビールが売られ続けています。
北京っ子が愛飲する地元のビール
「燕京ビール」に至っては、
もう何十年も同じ味、同じラベルで
売られているようです。

これは日本のビールマーケットは
既に成熟して競争が激化しており、
次々と新製品を出さないと他社との競争に負けて
利益が減少してしまうのに対し、
中国のビールマーケットはまだまだ未成熟で、
日本ほど競争が激しくないため、
何年も同じビールを売り続けても、
十分な利益を
上げられるためなのではないかと思います。

日本の消費者にとっては、
ビール会社各社が激しい競争を繰り広げ、
どんどんおいしいビールを新製品として
発売してくれることは大変ありがたいことです。
しかし、ビール会社の社員の立場に立ってみると、
この製品の短寿命化はたまったものではありません。

せっかく「これはおいしい!」
というビールを発売しても、
他社がもっとおいしいビールを出せば、
数ヵ月後にはまた更においしいビールを開発して
店頭に並べなければなりません。

このやってもやっても
「これでもう十分」ということがない果てしない競争。
この資本主義の究極の姿とも言える果てしない競争が、
日本の働く人たちに重くのしかかる、
圧迫感や閉塞感を醸成しているのではないでしょうか。

おカネが十分にあって消費するだけの人にとっては、
日本は質の高いモノやサービスに溢れる
天国のようなところですが、
そのおカネを稼ぐために
そうしたモノやサービスを供給する側に回ると、
とたんに地獄のような果てしない競争に
巻き込まれてしまいます。

「買えば天国、働きゃ地獄」。
これが外側にいる私から見た、
究極の資本主義国家への道を突き進む
日本の姿です。


←前回記事へ

2007年4月23日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ