第702回
夜明け前の中国ジャーナリズム
新聞は、中国ではプロパガンダの一手段です。
このため、今でも北京の街中では、
新聞を掲示する掲示板がそこかしこにあります。
新聞を買えない老百姓(らおばいしん、一般庶民)にも、
中国共産党の政策を浸透させる必要があるからです。
ただ、最近は中国の新聞の内容も
どんどん軟らかいものになりつつあります。
中国の新聞、と言えば、日本では
中国共産党機関紙「人民日報(れんみんりーばお)」が有名ですが、
こんなお硬い内容の新聞を読んでいる老百姓はほとんどおらず、
北京では事件記事や生活情報記事が多い
「北京青年報(べいじんちんにぇんばお)」や
「北京晩報(べいじんわんばお)」などが人気のようです。
また、新聞の内容は全て
当局の検閲を受けているはずなのですが、
最近は政府の見解と違う意見を
掲載する新聞も出始めています。
2005年には北京の「新京報(しんじんばお)」や
広州の「南方都市報(なんふぁんどぅーしーばお)」が
中国共産党の意向に沿わない報道をして編集幹部が更迭され、
それに抗議した記者たちがストライキに入ったり、
集団辞職をしたりする、という事件が起きました。
こう見ていくと、中国の新聞記者の人たちにも、
徐々にジャーナリスト魂が
芽生えてきているように思えますが、
一方で、最近問題になっているのが、
新聞記者が取材先に
金品を要求する事件が多発していることです。
一部の新聞記者は、取材先を褒めちぎる
いわゆる「ちょうちん記事」を書く見返りに金品を要求したり、
逆に、取材の過程で入手した
取材先が世間に知られたくない情報をネタに
「内幕をばらすぞ」と脅して
ゆすり行為を働いたりするのだそうです。
今年初めには、無認可炭鉱を取材しようとした記者が、
その炭鉱の経営者が雇った
黒社会(へいしゃーほい、暴力団)に撲殺される、
という事件が起きました。
この記者はその炭鉱が無認可であることをネタに、
炭鉱経営者からカネをせしめようとしていた、
と言われています。
中国の健全なジャーナリズムが夜明けを迎えるまでには、
まだまだ長い時間がかかるのかもしれません。
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