| 第700回「正直者がバカを見る」
 私は1996年4月に北京に来ましたので、この4月で北京に住んで丸11年になります。
 北京での生活は非常に便利になりましたし、普通に生活していれば物価もまだまだ安いです。
 通勤はタクシーで10分ですし、
 食べ物もおいしいですし、
 そうした面では全く文句はないのですが、
 11年経ってもどうしても好きになれないのが、
 「正直者がバカを見る」という社会全体の仕組みです。
 中国では、列にきちんと並んでいると、いつまで経っても自分の順番が回ってきませんし、
 交通ルールを守っていると、
 いつまで経っても目的地に着くことができませんし、
 所得税法を守っていると、
 いつまで経っても儲けることができません。
 こういう社会なので、人は列に割り込みますし、車は路肩を走って渋滞をすり抜けますし、
 企業は脱税をするのです。
 中国はオリンピックを来年に控え、毎月11日を「列に並ぶ日」にしたり、
 主要交差点に交通整理員を配置したりして、
 人々の規範意識や順法意識を高めようとしていますが、
 「正直者がバカを見る」という
 社会全体の仕組みを抜本的に変えない限り、
 中国の人たちが法律や社会のルールを守る日は
 来ないのではないかと思います。
 では、中国を正直者にとって住みやすい社会にするためにはどうしたらよいか、というと、
 やはりシンガポールのように性悪説に基づいて、
 法律や社会のルールを守らない人を徹底的に取り締まり、
 重い罰金を科すのが効果的なのではないかと思います。
 罰金を科されて損をするぐらいなら、
 中国の人たちも法律やルールを守ります。
 ただ、こうした取り締まりにはものすごい数の人が必要となります。
 中国でも万里の長城などの観光地では、
 痰を吐くと、どこからともなく
 取り締まりのおばさんが出てきて、
 罰金を取られるのですが、
 この取り締まりのおばさんを
 街中の至るところに配置するのは大変です。
 ここは定年退職してヒマを持て余している老人の人たちに、
 交替で自分の住む地区の取り締まりを
 してもらったらよいかもしれません。
 列に割り込みした人や、
 路肩を走った車のドライバーから
 徴収した罰金の一部を、
 おじいちゃん、おばあちゃんの
 お小遣いとしてあげることにすれば、
 みなさん、必死になって
 取り締まってくれるのではないでしょうか。
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