第592回
死刑囚の人権

国際人権団体・
アムネスティ・インターナショナルの
発表によれば、2005年、
世界で少なくとも2,148人の死刑が執行され、
その内、中国が約1,770人と
全体の8割以上を占めたそうです。

アムネスティのカーン事務局長は
「死刑は取り返しのつかない究極の人権否定だ」とし、
制度廃止の必要性を強調した、とのことです。

中国は死刑執行数ダントツナンバーワン国家である、
という事実だけでも、既に十分、
国際社会の批判の的なのですが、
最近は、死刑囚の臓器を臓器移植に使っている、
ということで、更に激しい批判を浴びています。

人権否定国家、中国。
しかし、ちょっと待ってください。

アムネスティの言うこともわかるのですが、
死刑執行数が多いおかげで、
中国の治安がそこそこ良い状態に保たれているのは、
まぎれもない事実です。
死刑囚の人権を考慮して、中国が死刑を廃止すれば、
中国の治安は確実に悪くなり、殺人や略奪などにより、
中国に住む罪のない人々の人権が
脅かされることになるのは、火を見るより明らかです。

また、ドナーの大部分が死刑囚である中国で、
死刑が廃止されてしまえば、
日本を始めとする世界各国の臓器移植希望者は、
一縷の望みをも絶たれ、
あとは座して死を待つのみ、
となってしまいます。

日本では現在、12,000人以上の臓器移植希望者が
ドナー(臓器提供者)が現れるのを待っています。
しかし、ドナー登録をしている人が少ないため、
待っている間に亡くなってしまう人も多いようです。
このため、わらにもすがる思いで、
中国に渡る患者さんも多いと聞きます。

死刑囚の人権を尊重すれば、
臓器移植希望者の生きる望みは
絶たれてしまうのです。

重い犯罪を犯した死刑囚にも人権はあります。
それは私も認めます。
しかし、死刑囚の人権を尊重するあまり、
罪のない人々の人権が脅かされたり、
生きる望みが絶たれたりするのは、
どうかと思います。

アムネスティのカーン事務局長は、
この辺、どうお考えになるのでしょうか。


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2006年8月4日(金)

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