第565回
柳田、テレビドラマへの出演依頼断る!

中国で最も知られている日本語の単語は、
「こんにちは」でも「ありがとう」でもありません。
「ミシミシ」です。

この「ミシミシ」、
昔の戦争映画で日本兵がしゃべっていた言葉だそうで、
「めしめし(飯飯)」のことらしいです。

タクシー運転手(以下、運)「おまえ、日本人か?」
柳田(以下、柳)「そうだ」
運「俺は日本語話せるぞ」
柳「ほー」
運「「ミシミシ」」
柳「...いや、それは、正しい日本語じゃない」
運「「ミシミシ」って、「ご飯を食べる」って意味じゃないのか?」
柳「違う」
運「じゃ、「ご飯を食べる」は日本語で何て言う」
柳「ご・は・ん・を・た・べ・る」
運「長すぎる。「ミシミシ」の方が簡単でいいな」

私は中国に10年間住んで、
こんな会話を何百回となく繰り返してきました。
中国政府はそろそろ何かの形で
「「ミシミシ」というのは、
正しい日本語ではありません」
ということを全人民のみなさんに
伝えて頂けるとありがたいです。

さて、以前、中国の戦争映画に出ていた
日本兵役の俳優は、みんな中国人でした。
これも「ミシミシ」大流行の一因に
なっているのではないかと思われます。
セリフを言わされている中国人俳優も、
それが、正しい日本語なのかどうか、
わからないのです。

しかし、最近の中国映画やテレビドラマでは、
日本人役には、ちゃんと日本人の俳優を
使うようになってきたようです。

ただ、中国で俳優をやるような日本人は
まだまだ少ないようで、
先日はなんと、私のところにまで
テレビドラマへの出演依頼が来ました。

テレビ局は中国のNHKと言われる中央電視台
(ちょんやんでんしたい、中央テレビ局)、
役柄は大日本帝国陸軍青年将校で
ちゃんとセリフもある、とのことでした。

私、個人的には、
中央電視台のドラマ撮影現場に非常に興味があり、
お引き受けしようかとも思ったのですが、
パートナーの劉さんに相談したところ
「日本の軍人の役は絶対にとんでもない悪役だし、
中央電視台のドラマは全国放送です。
そんな悪役イメージでもって
中国全土で有名になっちゃったら、
柳田さん、中国で商売できなくなりますよ」
と諭され、やむなくお断りしました。

日本人と中国人は顔は似ていますが、
身のこなしや姿勢などを見れば、セリフが無くても、
すぐに区別がつきます。

日本人役の俳優の仕事は中国での仕事ですが、
その付加価値の源泉は、
中国語が話せることなどではなく、
中国人の俳優ではこなせない、
日本人の役を完璧にこなせることにあります。

生粋の日本人であることにこそ価値がある。
これは、中国で働く、
全ての日本人に言えることなのではないでしょうか。


←前回記事へ

2006年6月2日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ