第552回
「ないないづくし」の大連が発展するには

日系の輸出型製造業や東北3省の経済発展に頼らない、
独自の発展モデルを考えなくてはならない、
ということは、大連市も十分承知しているようです。
それは大連市の最近の動きを見ていてもよーくわかります。

まず、大連は地理的に「遼東半島のどんづまり」という、
非常に不利な位置にあります。
大連で生産した物資の陸送を考えた場合、
大連は東北3省としかつながっておらず、
経済発展めざましい長江デルタマーケットや
北京・天津マーケットに輸送するには、
渤海湾をぐるーっと大回りしなければなりません。

この問題を解決するために、
大連市は船を使って、遼東半島と山東半島を
陸続きと同じ状態にしようと考えました。

今回大連に行って、大連保税区から聞いた話では、
近々、大連で火車(ふぉーちゃー、汽車)をそのまま船に乗せて、
対岸の山東省・煙台(いぇんたい)まで持っていく、
というプロジェクトが実現するそうです。

トラックを乗せる大連〜煙台間のカーフェリーは、
既にあったそうなのですが、
火車をそのまま乗せるトレインフェリーが就航すれば、
大連のみならず、東北3省の物資をも、
より大量により安く、煙台経由で
長江デルタマーケットに輸送することが可能となります。

大連のもう一つの問題は、
輸出型製造業が多く、現在のトレンドである、
元高と賃金の上昇が非常に不利に働く、という点です。

この問題を解決するために、
大連市は産業の高付加価値化を図りました。

市内にハイテクパークを作り、
ソフトウェアのオフショア開発をする
外国企業を誘致したのです。
特に、大連は日本語を話せるIT人材が豊富、
ということもあり、
日本のIT企業も多く進出しているようです。

ソフトウェア開発というのは、
製造業と同じく人海戦術で行うものらしいので、
人件費コストが日本より安い大連で、という点では、
製造業の大連進出とビジネスモデルは同じなのですが、
製造業よりも付加価値が高い分、
元高や賃金上昇を吸収しやすいのでしょう。

大連は国ではありませんが、
「ないないづくし」という点では、
日本や韓国が置かれている立場に非常に似ています。
「ないないづくし」の大連の発展プランは、
日本が将来、どういう方向に進んでいくべきなのか、
ということを考える上で、
非常に参考になるのではないでしょうか。


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2006年5月3日(水)

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