第533回
「人の寿命もカネ次第」

先週、今年の全国人民代表大会が閉幕しました。
全国人民代表大会は、
日本では「全人代(ぜんじんだい)」と呼ばれますが、
中国語では「人大(れんだー)」と呼ばれています。

「人大」は日本の国会に相当する
中国の最高権力機関で、
毎年3月、北京の人民大会堂で開催されます。
議員に当たる代表は約3,000人、任期は5年、
議長に当たる常務委員長は、
共産党序列第二位の呉邦国氏です。

かつては、党や政府の決定を
判で押したように追認するだけの、
「ゴム印議会」と揶揄されていましたが、
最近は立法手続や
党・政府に対する監督機能が強化され、
重要性が増しているようです。

さて、今回の「人大」のキーワードは、
なんと言っても「民衆重視」です。
「民衆重視」の姿勢を打ち出すことにより、
民衆の政府に対する不満を和らげ、
社会を安定させたい、
という中国政府の気持ちが、
各政策に色濃く現れています。

「民衆重視」政策で、
真っ先に解決しなければならないのは、
「看病難、看病貴
(かんびんなん、かんびんぐい)」、
「病気になっても治療を受けられず、
治療を受けられたとしても医療費が高い」
という問題です。

現在、中国では農村人口の
80%弱が医療保険に加入していないそうです。
医療保険に加入していなければ、
当然、医療費は全額自己負担になるのですが、
農民が重病を患うと、
約7,000元(105,000円)もの治療費が
必要になると言われています。
この金額は、農民の平均年収の
約2倍に当たります。

ほとんどの農民は、
一度重病を患ってしまうと、
おカネが無いため、
まともな治療を受けることができず、
あとは伏して死を待つのみ、
となってしまうのです。

こうした事態を改善するために、
中国政府は今回の「人大」で発表した
政府活動報告案の中で、
「今後5年以内に、
農村衛生医療体制、ネットワークに
200億元(3,000億円)以上を投入する」
としています。

同じ中国の中でも、
都市部の最富裕地区と農村部の最貧地区では、
平均寿命が20年も違うと言われています。

今や中国では「人の寿命もカネ次第」の時代が
到来しているのです。

今回の政策により、中国の農民の人たちが
病気になったら普通に治療を受けられるようになり、
「長生きする権利」を手にすることを、
切に願っています。


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2006年3月20日(月)

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