第504回
日中国交正常化から34年

日中両国民の相互理解が、
日中友好の基礎になるのはまぎれもない事実ですが、
いくら日中両国民の相互理解が進んでも、
両国の政府が意地の張り合いをしていては、
本当の日中友好は図れません。

現在の日中のお付き合いは、1972年、
当時の田中角栄首相の劇的な訪中により、
日中の国交が正常化されたことに始まります。

あれだけの戦争をして、
終戦後わずか27年で国交を正常化できたのは、
当時、日本は自民党が、中国は中国共産党が、
圧倒的な力を持っていたことが、
大きな要因の一つなのではないか、と思います。

日本政府は「中華民国とは断交して、
明日からは共産党中国と仲良くする」、
中国政府は「一切の戦争賠償の請求権を放棄して、
明日からは日本と仲良くする」と言って、
それぞれの国民を納得させたわけです。

あれから34年。
今の自民党と中国共産党に
あんな芸当ができるでしょうか。

国内に不安をかかえた国の政府が、
国民の怒りの矛先を外国にそらすために
右翼的な主張をするのは世の常です。
過去に起こった戦争の多くは、
こうした為政者の保身が原因で
始められたのではないでしょうか。

しかし、両国の経済発展と、両国民の幸せを考えれば、
日中関係は良いに越したことはありません。

アメリカの大手証券会社・ゴールドマン・サックスが
投資家向けにまとめた、BRICsのレポートでは、
2004年に
アメリカ、日本、ドイツ、イギリスの順だった
世界のGDPランキングは、
2030年には
アメリカ、中国、日本、インドの順、
2050年には
中国、アメリカ、インド、日本の順
になることが予想されています。

今後、中国はアジアの盟主どころか、
世界の盟主になることが予想されているのに対し、
日本は世界どころか、アジアの中でも
中国に抜かれ、インドに抜かれして、
ジリ貧になっていくことが予想されています。

今後の中国の将来性を考えた場合、
日本にとって中国は、仲良くしこそすれ、
敵に回すべき相手では決してないのです。

また、中国にとっても、日本は現状、
地理的に最も近い経済大国です。
いくら中国経済が急成長しているとはいえ、
中国のGDPは、まだまだ日本の半分以下です。
当面は、日本と協力していった方が、
自国の経済成長を力強く、
且つ、持続的なものにするために有効です。

にもかかわらず、両国政府は、
アジアの盟主としてのプライドと、
右翼的な主張による国内の求心力の回復を目的に、
外交的なつばぜり合いを続けています。

日中両国政府には、
是非、国民の幸せを第一に考えて頂き、
日中国交正常化のときのような
胆力を見せてほしいものだと思います。


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