第498回
北京駐在員の妻は二度泣く

北京駐在員の妻は二度泣く、と言われています。

一度目は、夫が会社から北京駐在を命ぜられ、
住み慣れた日本を離れて、なんで私がそんな言葉の通じない、
治安も悪いところに行かなきゃいけないの、と言って泣きます。

二度目は、夫に帰国辞令が出て、今までの優雅な生活から、
日本での普通の庶民の暮らしに戻ってしまうのがいやで、
まだ帰りたくない、と言って泣くのです。

北京駐在員の妻の暮らしは、
夫の会社の駐在員に対する待遇にもよりますが、
概して優雅です。
その上、物価が日本の1/5ぐらいですので、
夫の給料が日本のときと同じでも、
日本にいるときより2ランク、3ランク上の生活ができます。

まず、住んでいるところは、プール、ジム、テニスコート、
レストラン、スーパーマーケットなどが完備された
外国人用アパートメント。
敷地内へは住人以外の人が勝手に入ることはできず、
警備員が24時間体制で見回りをしてくれますので、
セキュリティーも万全です。

日本でこんなところに住もうと思ったら、
家賃を払うだけで夫の給料がなくなってしまいそうですが、
ここ北京では、家賃は一般的に会社が全額出してくれます。

そして、掃除、洗濯、皿洗いなどの家事は、
「アーイー」と呼ばれる家政婦さんが全てやってくれます。
「アーイー」とは、中国語で「おばさん」という意味なのですが、
駐在員の妻の間では「家政婦さん」の意味で使われています。

日本では、家政婦さんをフルタイムで雇ったら、
大変な金額になってしまいますが、
北京では週5日、1日6時間というフルタイムに近い条件でも、
月1,000元(15,000円)程度のお給料で
来てもらうことができます。

「アーイー」に家事をやってもらって余った時間は、
駐在員の妻同士で、習い事をしたり、
タクシーでヒルトンホテルなどの
高級ホテルに行ってランチを食べたりします。

これが日本に帰ったら、
家事は自分でやらなければなりませんし、
気軽にタクシーに乗って、
ヒルトンでランチ、というわけにはいきません。

そりゃ、夫に帰国辞令が出たら、泣きますわな。

先日、北京日本人学校で、
生徒に「私が将来なりたいもの」という
アンケートをとったところ、
「プロサッカー選手」とか、「保育園の先生」とか、
そういった子供らしい答えの中に、
「駐在員の妻」という答えがあったそうです。

やはり、いつも近くで見ている
子供の目はするどいですなぁ。


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