第492回
「小姐」から「服務員」へ
言葉は生きものです。
それは中国語も同じで、
その時々の社会の状況や流行によって、
どんどん変わっていきます。
ですから、いくら中国語のネイティブスピーカーでも、
日本在住数十年なんていう先生に
中国語を習ってから中国に来ると、
「柳田さんはカビが生えたような中国語を話しますね」
と言われてしまうのです。
先日も中国人の友人とレストランで食事をして、
お勘定をするときにウェイトレスに
「結帳(じえじゃん)」と言ったところ、
友人から「柳田さん、田舎者だと思われるから、
「まいたん」って言ってください。「まいたん」」
と言われてしまいました。
「埋単(まいたん)」はもともと広東語で
「お勘定」の意味なのですが、
最近では、ここ首都・北京でも
正しい中国語である「結帳」を駆逐しつつあります。
「お勘定」は「じえじゃん」って、習ったのになぁ〜。
この1年間で最も劇的に変わった中国語は、
レストランでのウェイトレスの呼び方です。
1年前までは、レストランで
ウェイトレスに来てほしいときには
「小姐(しゃおじぇ、お嬢さん)」と呼ぶのが
普通だったのですが、
今では、ほとんど全ての人が、
「服務員(ふーうーゆぇん、サービス係)」と呼びます。
中国のテレビで清朝宮廷ものの
時代劇を見ているとわかるのですが、
「小姐」という言葉はもともと、
宮廷やお金持ちの家の使用人が、
その家の主の夫人や娘を呼ぶときの尊称です。
これが、最近ではどこでどう間違ったのか、
カラオケやマッサージなど、
風俗関係のお店で働く女性のことを
「小姐」と呼ぶようになってしまったために、
ウェイトレスに「しゃおじぇ」と呼びかけると、
露骨にいやな顔をされたりするように
なってしまいました。
「ミス王」とか、「張さん」の意味で、
若い女性の苗字に「小姐」を付けて、
「王小姐(わんしゃおじぇ)」、
「張小姐(じゃんしゃおじぇ)」と言う分には、
全く問題がないようなのですが、
苗字を付けずに呼びかけると、
とたんに失礼な表現になってしまうようです。
この辺、非常にビミョーです。
「服務員」が普及しつつある中国ですが、
ある中国の新聞が、働く女性を対象に、
「「小姐」がいやなら、なんと呼ばれたいのか」
というアンケートをとったところ、
トップは「服務員」ではなく、
「美女(めいにゅぃー)」だったそうです。
あんたたち、ずーずーしいにもほどがあるよ。
ホントに。
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