第397回
「金持ち喧嘩せず」

日本では、「中国人は列に並ばない」
というのが定説になっています。
実際、中国に出張や旅行で来られて、
様々な所で横入りをされ、
不愉快な思いをされた方も多いのではないでしょうか。

しかし、高級ホテルや高級オフィスビルに行くと、
中国の人たちはみんなきちんと並んでいます。
エレベーターから下りる時に、
「お先にどうぞ」と譲られる事さえあります。

なんという、心のゆとり。

こういう時、私の頭の中には、
「金持ち喧嘩せず」というフレーズが思い浮かびます。
高級ホテルや高級オフィスビルに出入りしている様な人は、
その大部分が「富士山型」の年収分布の
8合目以上に位置するお金持ちですので、
心にゆとりがありますし、
つまらない事でいざこざが起きるのを避けたい、
という気持ちもあるのでしょう。

一方、動物園や公園のチケット売場で並んでいると、
信じられないぐらい横入りされます。
通常、「列」というのは
各窓口に対して縦に伸びるものなのですが、
中国の場合、窓口のカウンター沿いに
べったりと横に広がります。

で、各自が手に持ったお金を係員の鼻先にかざし、
係員にお金を取ってもらった人が、
「次の人」という事になります。

日曜日に北京動物園なんかに行こうものなら、
チケット売場はもう戦場です。
私も家族を連れて、
日曜日の北京動物園に行った事がありますが、
チケットを買うには、かなりの気合が必要です。

まずは、妻と3人の子供たちを
戦闘に巻き込まれない安全な所に退避させます。
そして、お金を握り締めて窓口の人だかりに近付き、
彼らの肩越しや頭越しに係員にお金を突き出し、
「うーじゃーん!うーじゃーん!(5枚!5枚!)」
と枚数を叫ぶのです。

北京動物園の入場料は15元(225円)ですので、
「富士山型」の年収分布の、
1合目、2合目に位置する貧乏人でも、
ちょっと無理をすれば、家族で来る事ができます。
同じ中国人でも、北京動物園にいる人たちと、
高級ホテルや高級オフィスビルにいる人たちとでは、
人種が違うのです。

この様に、同じ北京市内でも、行く所によって、
来ている中国の人たちの層も違いますし、
彼らの行動も違ってきます。

「中国人はどこに行っても横入りしてくる!
本当に不愉快だ!」
などと怒っている日本人は、
そういう横入りする1合目、2合目の貧乏人が
たくさんいる所にばかり行っている、
という事なのです。


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