第307回
「なんでワシらだけ、苦労せないかんねん!」
先日、久々に山西省の省都・太原に出張に行って参りました。
山西省は石炭の故郷と呼ばれ、
中国最大の石炭生産量を誇る省ですので、
私が丸紅北京支店で石炭の貿易の仕事をしていた時には、
毎月の様に太原に行っていました。
ほぼ3年ぶりで太原を訪れて感じたのは、
「街並みがあんまり変わってない」という事です。
石炭の値上がりで石炭成金が続出している、という割には、
そんなに好景気で沸き上がっている、という感じはしません。
確かに3年前には無かった
「国際貿易ビル」なんていう名前の高層ビルが建ち、
その中に5つ星のホテルが出来たりはしていますが、
街並みの変化はほんの一部であり、全体的に見ると、
やはり、北京や上海に比べ開発が遅れている感じは否めません。
道を歩いている人たちのファッションも、
北京や上海に比べると垢抜けません。
さすがに人民服を着ている様な人はいませんが、
色使いのせいでしょうか、何となくパッとしません。
やはり、北京や上海は別格です。
北京や上海を見て「中国はすごい!」と言っていては
いけない様な気がします。
これが工場がある太原市の郊外になると、
3年前と「あんまり変わっていない」ではなく、
「全然変わっていない」になります。
車で走っていると、時々、
レンガ造りの大衆食堂や金物屋が十数軒、
軒を並べる村があり、
それ以外は果てしなく続く畑です。
3年どころではなくて、
30年ぐらい時間が止まってしまっている様な感じです。
破竹の経済成長を続ける中国ですが、
こうして田舎に行くと、
どう見てもそんなに成長している様には見えません。
生活のレベルも北京や上海と比べると雲泥の差です。
いくら田舎は物価が安いと言っても、
年収500元(7,500円)では、食べていくのがやっとです。
こうした田舎の農民たちが、
テレビか何かで北京や上海の
きらびやかな都会生活の映像を見れば、
「なんでワシらだけ、毎日、畑耕して苦労せないかんねん!」
という不満を募らせるのも無理はありません。
中国政府は「田舎の人たちの不満」という時限爆弾を抱えています。
今後、北京や上海といった大都市に蓄積された富を、
如何に素早く田舎に還流していくか、というのが、
共産党一党独裁政権を維持する為の鍵となる、
と言っても過言ではありません。
「地方経済の活性化」は、日本でも問題にはなっていますが、
中国の場合は日本のそれよりはるかに深刻な問題なのです。
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