第259回
「食べ放題」をめぐる闘い

「食べ放題」という制度は、
中国の人たちのメンタリティーにピタッとフィットしています。
「自分の好きなものをいくらでも食べられる」。
食の満足感と満腹感にこだわる中国の人たちにとって、
こんなにすばらしい事はありません。

接待で使っても、予算を気にせず、
お客さんに100%満腹状態で帰って頂く事が出来ます。
そんな訳で、最近、北京では日本料理や火鍋を中心に、
「食べ放題」を導入する店が増えています。

しかし、「食べ放題」を導入するには、大きなリスクが伴います。
まずは、注文するだけ注文して、全部食べないで帰る客。
確かに、お腹が空いている時は、
たくさん食べられる様な気がするのですが、
店側にとっては、
こういう客が多いと原価率が跳ね上がってしまいます。

更には、食べきれなかった分をお持ち帰りしようとする客。
それもナプキンに包んでこっそり、というのではなく、
店員を呼んでお持ち帰り用の容器に入れろ、
と指示したりします。
店員が「食べ放題」では
お持ち帰りはルール違反である事を説明すると、
「俺が持ち帰らなかったら、どうせ残飯になるんだから、
もったないだろ!」と反論したりします。
もう無茶苦茶です。

日本のお客さんはみんな行儀が良いので、
「食べ放題」では、食べられる分だけ注文しますが、
中国ではこうした客が多いので、
ほとんどの店で
「残したらその料理の正規料金の半額を頂きます」
という様な注意書きが書いてあります。

ホテルの朝のブッフェも一種の「食べ放題」です。
以前、黒龍江省・ハルピンに出張した時に、
5つ星のホテルに泊まったのですが、
朝のブッフェに来たおばさんが
部屋から持ってきたランドリーバッグに、
パンを次々と投げ込んでいるのを見て、
あ然とした事があります。

ホテルの従業員もその場にいるのですが、
みんな、なんとなくややこしい事に巻き込まれる予感がしたのか、
見て見ぬふりをしています。
結局、おばさんは、
パンで一杯になったランドリーバッグを持って
レストランから出て行き、
パンは数分後、何事もなかった様に補充され、
レストランに日常が戻ってきました。

もちろん、こんな人たちばかりではなく、
中国にもちゃんとルールを守って
「食べ放題」を楽しんでいる人はたくさんいます。
しかし、中国で食べ放題の店を始めようと考えている人は、
行儀の良い日本のお客さんを基準に考えていると、
痛い目に合う可能性がある事は
頭に入れておいた方が良いかと思います。


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