第241回
「三農問題」
中国経済は目覚ましい発展を遂げている様に見えますが、
発展しているのは主に沿海部の都市であり、
内陸部の農村はまだまだ立ち遅れています。
以前お話しした様に、現在の中国経済を理解するには、
中国を1つの国として捉えるのではなく、
「中国沿海部」という人口1億人の裕福な国と、
「中国内陸部」という人口12億人の貧乏な国という、
2つの国として捉えた方が分かり易いです。
中国は共産主義の国ですから、
建国以来ずっと都市部の住民も農村の農民も、
みんな平等に発展して行こうと考えていました。
しかし、ケ小平氏は、中国は大きすぎるので、
まずは富める人から富んでいって、
先に富んだ人が貧しい人を引き上げた方が合理的である、
と考えました。
これがケ小平氏の「先富論」です。
そして現在、ケ小平氏の思惑通り、
まずは沿海部が発展しました。
次は、この沿海部の富を、
内陸部に伝播させていく段階です。
これが「西部大開発」政策の背景です。
最近では、外資企業の投資に対する優遇政策も、
沿海部ではどんどん無くなる傾向にあり、
内陸部への誘致が盛んに行われている様です。
しかし、前回ご紹介した福建省から騙されてイラクに行った
出稼ぎ労働者の例からも分かる通り、
中国の農村や漁村には
明日食べるものにも困っている人がたくさんいます。
こうした農業、農村、農民のいわゆる「三農問題」は、
3月の全人代でも大きく取り上げられました。
こうした貧しい農民にとって、一発逆転のチャンスは、
頭の良い子供を産んで、
子供が良い学校に行って、高給取りになる事です。
しかし、いくら子供の頭が良くても、
良い学校に行かせるにはたくさんのお金が必要です。
田畑や家財道具を売ったり、
高利貸しからお金を借りたり、
という大きなリスクを犯さない限り、
このチャンスは生かせません。
となると、やはり男の子を産んで、
少しでも多くの田畑を耕して、
収入を増やすしかありません。
しかし、男の子が生まれる確率は1/2。
そんなに都合良く、
農村に男の子ばかり生まれるはずがありません。
それに中国は「1人っ子政策」の国ですので、
男の子が生まれるまで産み続ける、という事も出来ません。
という事で、男女平等と言われる中国でも、
農村では完全に「男尊女卑」なのです。
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