第239回
イラクで捕まった中国人
先月、イラクで日本人のNGOとジャーナリストが、
武装勢力に拘束される、という事件が起きました。
NGOがイラクの人々を助けたいと思う気持ちや、
ジャーナリストがイラクの本当の姿を伝えたい
と思う気持ちは分からないでもないのですが、
日本政府の渡航禁止勧告が出ているにも関わらず、
それを無視して活動するからには、
命を落としてもやむなし、
捕まった場合の救出費用は本人が負担するべき、
と個人的には思います。
その思いは、
武装勢力に拘束された中国人のいきさつを聞いて、
更に強くなりました。
日本人拘束のニュースに隠れて余り目立ちませんでしたが、
実は、中国人も密かに拘束されていました。
拘束された中国人男性7人は
福建省から出稼ぎでイラクに行っていましたが、
イラクが戦争状態にある、という事を
全く知らなかったそうです。
7人の出身地、福建省平潭県は人口約40万人、
主な産業である漁業では生計が成り立たない為、
多くの住民がイスラエル、シリア、アフリカ諸国などへ
出稼ぎに行きます。
昨年秋のある日、
街にイラクへの出稼ぎ募集の広告が
たくさん張り出されました。
応募すると仲介人は
「イラクに総工費数十億元(数百億円)のプロジェクトがある。
渡航の為の手数料が2-3万元(30-45万円)かかるが、
大きなプロジェクトなのですぐに元が取れ、
金儲けが出来る。
イラクは戦争をしていないので安全だ」と誘ったそうです。
もちろんそんな大金など持っていない彼らは、
高利貸から借金をし、
手数料を払ってイラクへと発ちました。
しかし、イラクに着いてみると戦争状態が続いており、
そんなプロジェクトなど実在しない事が分かりました。
とりあえず生きて行かなければならないので、
彼らは酒場などでの仕事に就きましたが、
言葉も話せない外国人に、
条件の良い仕事があるはずもなく、
給料は生きて行くのがやっとの金額しかもらえません。
中国に帰る飛行機のチケットを買う事はおろか、
とりあえず戦争状態のイラクを脱出する事も出来ません。
そんな状態の中で、今回、追い討ちをかける様に、
武装勢力に捕まってしまいました。
正に、不幸ここに極まれり、といった感じです。
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