第223回
世界で一番海から遠い街

中国の一番西の端に、
新疆ウイグル自治区という自治区があります。
ここには中国で5番目に多い少数民族である、
トルコ系のウイグル族が多く住んでいる為、
省ではなく、ウイグル族の自治区となっています。

ここの区都・ウルムチは、
世界で一番海から遠い街、と言われています。
ほんとかな、と思って世界地図を見ると、
おお、確かに、
ウルムチはユーラシア大陸の「へそ」
とも言える場所に位置しています。
東の渤海、西の黒海、北の北極海、南のベンガル湾、
どの方向の海からも、えらく遠いです。

この新疆ウイグル自治区、
実は非常に良質な石炭の埋蔵があります。
しかし、石炭の消費地や、輸出炭の積出港がある沿海部とは、
3,000km以上離れています。
こんな距離を鉄道で運んでしまうと、
沿海部で産出される石炭より
はるかに高いものになってしまいます。
いくら良質な石炭でもこれでは売れません。

では、地元で消費するか、と言っても、
これといった産業がない自治区内の石炭消費量は
たかが知れています。
せっかくの良質な石炭の埋蔵、
このまま眠らせておくのは非常にもったいない話です。
何とかうまく利用出来ないものでしょうか。

そこで出て来るのが、商品の付加価値を上げて、
価格の中で輸送コストが占める割合を下げる、
という考え方です。
例えば、トン当たり50ドルの石炭を加工して活性炭にすれば、
500ドルで売る事が出来ます。
輸送コストをトン当たり30ドルとした場合、
50ドルの石炭を運ぶのと、500ドルの活性炭を運ぶのとでは、
コストに与えるインパクトが全然違います。

しかし、海まで3,000kmという
想像を絶する距離を輸送するコストは、
500ドルの活性炭でも吸収出来ませんでした。
私は丸紅時代、ウルムチ近郊で生産される活性炭を
日本に輸出しようとしたのですが、
やはり、値段が合いませんでした。

3桁ドルでだめなら、4桁ドルにするまでです。
しかし、石炭そのものを加工して、
4桁ドルの商品を作るのは、ほぼ不可能です。
では、どうするか。
皆さんもふるさと思いのウイグル族になったつもりで、
考えてみてください。
答えは明後日。


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