第200回
支払い命令&強制執行セット

以前、北京のある日系企業の方が、
当社に債権回収の相談に来られました。
同社の債権は生産している商品の性質上、
数千元(数万円)、数万元(数十万円)の小口債権が
たくさんの企業に分散している、という状態でした。
1社当たりの債権は数千元、数万元ですが、
全部あわせるとその会社の資金繰りを
圧迫するぐらいの金額になっていました。

更に悪い事に、その商品の業界は完全な買い手市場で、
受注する時に、前回の未払い分の支払いを
お願い(要請ではなくお願い)しようものなら、
「払わないなんて言ってないだろ!
そんな事言うなら、お宅には二度と発注しない!」
と言う様なお客ばかりだそうです。

ちゃんと払ってくれるお客だけ相手にしていれば
良いと思うのですが、そんな事をすれば、
他社に発注が流れ、すぐに倒産に追い込まれてしまうそうです。
そうして、不本意ながら代金回収の当ての無い受注を繰り返し、
未収債権の総額はどんどん膨らんで行きました。

1社当たりの未収債権額が大きければ、
弁護士に債権回収を依頼する事も出来るのですが、
今回はそうは行きません。
知り合いの弁護士に相談した所、
こういう場合は、裁判所に支払い命令を出してもらい、
強制執行してもらうしかない、というのがその答えでした。

相手方の社印かサインがある契約書と納品書があれば、
裁判所が支払い命令を出してくれます。
支払い命令が出てから15日以内に
相手方から異議申し立てが出なければ、
裁判所が強制執行をしてくれます。
支払い命令&強制執行セットのお値段は
1社当たり4,500元(67,500円)。
1社当たり数千元、数万元の小口債権でも、
このお値段で回収が出来れば算盤が合います。

しかし、支払い命令から15日以内に
相手方から異議申し立てが出てしまうと、
支払い命令は無効、
強制執行は出来なくなってしまいます。
その場合は、改めて相手方を訴えて、
裁判に持ち込むしかないのですが、
裁判に必要な弁護士費用が債権額を上回る様な状況であれば、
もう泣き寝入りするしかありません。

やはり、中国で物やサービスを売る場合には、
ある程度の貸し倒れがあっても
倒産に追い込まれない余裕ある資金計画を立てるか、
若しくは、
「金を払わないやつには売ってやらない!」と言えるぐらい
魅力ある商品を開発する事が不可欠です。


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