第196回
相手を思いやった「宴会」

では、日本に招いた中国企業の人たちを、
どこに連れて行けば良いのでしょうか。
私が丸紅時代、良く利用したのは
四谷三丁目にある「唐人凧」という食べ放題のお店です。
しゃぶしゃぶ、すき焼き、鍋料理が食べ放題、
ビール、日本酒が飲み放題で1人8,000円。
内装も比較的高級感があり、個室もありますので、
日本での「宴会」には重宝しました。

食べ放題ですので、
こちらも予算の事を考えず、
心置きなく料理やお酒を勧められますし、
中国側も「いくらでも食べて、飲んでください」
と言われる事は、「大歓迎」という意味になりますので、
100%満足してもらえます。

あと、そんなに体裁を気にしなくて良い間柄であれば、
居酒屋も良いかもしれません。
居酒屋でたくさん料理を注文して、
一緒につつく、というのは、
中国のスタイルに非常に良く似ています。

一方で、定食や西洋料理のコース料理に対しては、
中国の人たちは何か「寂しい」ものを感じる様です。
「みんなで一緒に同じ料理をつついて、
これはおいしいだの、これはまずいだの
ワイワイ言いながら食べるのが楽しいのに、
1人1人が好き勝手な料理を食べたら、
一緒に食べている意味がない」というのがその理由です。
それはごもっとも。
中国の人たちとの「宴会」に、
定食や西洋料理のコース料理は向きません。

「宴会」1つ開くのも、
日本と中国では文化や習慣の違いがあるので大変です。
しかし、大切なのは、相手の文化や習慣を理解した上で、
それに合わせて「宴会」を開こう、
という「気持ち」なのではないでしょうか。

私は丸紅時代、山奥の炭鉱に行った時に、
川魚の刺身を出された事があります。
「日本人の柳田先生が来るので、
今日は特別に地元で獲れた川魚のお刺身を用意しました。
日本人はお刺身食べるの好きでしょ」というのがその理由です。
中国で川魚を生で食べると肝炎になる、と聞いていましたので、
ちょっと怖かったのですが、
それでも「日本人が好きなお刺身で接待しよう」という、
炭鉱の方々の「気持ち」は非常に嬉しかったです。

ビジネスとは最終的には
人と人との信頼関係で出来て行くものだと思います。
お互いが相手を思いやった「宴会」を開く事は、
信頼関係構築の第一歩だと、私は思うのです。


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