第170回
「能動的和僑」と「受動的和僑」
韓国人よりももっと多いのが台湾人です。
上海には台湾人が40万人もいるそうです。
北京にもたくさんいるものと思われますが、
台湾は大陸と言葉も同じ、風俗も同じですので、
たくさんいても韓国人ほど目立ちません。
以前、北京にいる台湾人と言えば、
大陸企業との貿易などを営む企業経営者がほとんどで、
最も羽振りの良い人種と言われていましたが、
台湾人も増加するに従って
企業経営者以外の人たちも北京に来ている様です。
先日、私の会社に日本語を話せる台湾人の女性が
職を求めて面接に来ました。
話を聞くと、ご主人と一緒に北京に来て、
ご主人は中国企業に就職したのですが、
中国企業の給料は安いので、
自分も働きに出なければならない、との事でした。
台湾人が中国企業に雇われる、なんていう事は、
以前では考えられない事です。
こんなに大量の台湾人が中国大陸に移り住んでいるのも、
台湾経済が空洞化してしまったせいです。
台湾では職が無いので、
大陸に来て就職せざるを得ないのでしょう。
韓国人が北京でこんなに増えたのも、
韓国が経済危機に陥り、
中国に来ざるを得なかったからだと言われています。
遡れば、ブラジルの日系人の祖先も、
日本で農民をやっていても食えないので、
新天地を求めてブラジルに渡った、と聞いています。
人は自国の経済がどうしようもなくボロボロになると、
飯の種を求めて外国に移住するのかもしれません。
世界各地で独自の経済圏を形成している華僑も、
彼らの祖先は中国が貧しかったり、
戦争でボロボロになったりした時代が長かった為、
中国国内で食っていく事が出来ず、
やむなく外国に飯の種を探しに行った人たちかもしれません。
そういう意味では、海外に移住する日本人が少ない、
というのは、日本の経済がまだまだ余力がある、という事で、
良い事なのかもしれません。
実際、大学を出て就職出来なくても、
フリーターとしてアルバイトで生活を維持していける、
というのは、大部分の諸外国から比べれば、
非常に恵まれた状態です。
ホームレスでも、餓死した人というのは、
余り聞いた事がありません。
我々、北京で就職または起業した日本人の間では、
よく「和僑」という言葉が使われます。
海外に移住した中国人が「華僑」なら、
海外に移住した日本人は「和僑」だろう、という事です。
「自分の力を試したい」とか、
「中国でこういう仕事をしたい」という
「能動的和僑」が増えるのは嬉しいのですが、
日本の経済が更にボロボロになって、
どうしても日本では食えないので中国に来る、という
「受動的和僑」が増えるのは、
余り好ましい事ではありません。
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