第126回
自分の本当の実力
商社は海外に事務所がある。商社マンは英語が話せる。
それだけで価値があった時代はとっくに終わり、
今では、日本の各メーカーが、独自で海外に工場を作ったり、
駐在員事務所を作ったりしています。
但し、独自で海外進出をしているメーカーは、
資金力や人材が揃った大手・中堅企業が多く、
中小企業は未だに人材、経験の面から、
商社に頼らざるを得ない会社が多いと思います。
一方の商社は、前回お話しした通り、
1人1人が1年間に稼がなければならない金額が大きい為、
1年間、一生懸命働いても数百万円しか儲からない、
などという商売はやっていられません。
実際、私も丸紅にいる時は、多くの中小企業の方から、
海外からこういう商品を仕入れたい、
または、海外にこういう商品を売りたい、
というお話を頂きましたが、
そのほとんどはお断りせざるを得ませんでした。
先方の目には「中小企業だと思ってばかにしやがって」
と映ってしまったかもしれませんが、
こちらも年間数千万円の粗利を稼ぐ為には、
効率の良い仕事を優先しなければなりません。
こうした状況に直面して、
「もし、丸紅北京支店の連絡事務所の機能をスポッと抜き出して、
会社組織にして、もっと低いコストで運営すれば、
商社から断られ続けてきた日本の中小企業に対し、
商社の駐在員事務所と同等のサービスを
安価で提供する事が出来るのではないか」と考えたのが、
「中国事務所代行サービス」です。
この「中国事務所代行サービス」が市場に受け入れられるか、
どうしても試してみたかったので独立起業した、
というとかっこ良いのですが、
ほんとは「石炭業界での商社の将来を儚んで」とか、
「もう二度と一緒に仕事をしたくない人がいた」とか、
「東京で満員電車に乗って通勤するのが嫌だった」とか、
かっこ悪い理由もたくさんありました。
ただ、丸紅在籍中、私は
「丸紅ののれん代は高すぎる」と常々思ってきましたので、
自分の本当の実力がどれぐらいあるのか試してみたい、
「丸紅」の看板を外した自分がどれだけのお金を稼げるのか、
どれだけの付加価値を生み出せるのか見てみたい、
という気持ちがあった事は確かです。
そんなこんなで、「思い立ったらすぐ実行」を旨とする私も、
さすがに妻と3人の娘の顔を見て、2日ぐらい悩んだ末に、
丸紅を辞めて、独立起業する事を決意したのでした。
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