第122回
共産党一党独裁体制にとって、有害か無害か?

昔の中国であれば、「住民運動」や「抗議集会」を開く事など、
居民委員会が許しませんでした。
居民委員会のメンバーは、
その地区で権力を持った長老や肝っ玉母さん達ですので、
彼らが「止めろ」と言えば、一般住民は従わざるを得ません。
言ってみれば、日本の町内会の中国共産党版、
という感じでしょうか。

それが新しく出来たニュータウンでは、
その地区にずっと住んでいる長老も肝っ玉母さんもいませんので、
睨みを利かせる人がいません。
その代わり、隣に住んでいる人がどんな人かも分かりませんので、
怪しい人間がその地区に入って来ても、誰も分かりません。
今、中国では、日本でマンションが出来始めて、
町内会が消滅していったのと同じ事が起こっています。

こうした事もあって、北京では以前は無かった
「住民運動」や「抗議集会」が起こっているのですが、
公安当局もこうした比較的「無害」な住民活動に就いては、
取り締まりも何もしません。
中国の政治が非常に分かり易いのは、
たった一つの判断基準で全てが理解出来る事です。
その判断基準とは、
「共産党一党独裁体制にとって、有害か無害か?」です。

中国政府は何でもかんでも
闇雲に厳しく取り締まる訳ではありません。
例えば、殿方の夜の娯楽の王様「カラオケ」です。

中国ではいわゆる「三陪服務(さんぺいふーうー)」は
法律で禁止されています。
「三陪服務」とは
「一緒に座る(陪座)」、
「一緒に踊る(陪跳)」、
「一緒に酒を飲む(陪喝)」の事です。
要は、カラオケ屋に行って、
歌ったり、酒を飲んだりするのは構わないけれど、
お店の女の子と一緒に座ったり、一緒に踊ったり、
一緒に酒を飲んだりしてはいけませんよ、という事です。

私が出張で中国に来ていた1990年代前半は、
この「三陪服務」の取り締まりがまだ非常に厳しく、
駐在員の方にカラオケに連れて行ってもらうと、
「一緒に踊ったり」、「一緒に酒を飲んだり」はもちろんの事、
「一緒に座ったり」もダメですので、
お店の女の子がみんな「マイ座布団」を持って来て、
床に正座した状態でお客さんとおしゃべりする、
という奇妙な光景が繰り広げられていました。
これは、同じ高さで無ければ「陪座」には当たらないだろう、
という店側の防衛手段です。
さすがは「上に政策あれば、下に対策あり」の国です。


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