第117回
マイホーム内装ブーム

先日、昨年末4%だった中国の失業率が、
SARSの影響で4.5%まで上がってしまった、
との発表がありました。
これだけ見ると、中国の失業率は日本より1%近く低く見えますが、
この失業率には
前回お話しした「下崗」の人は含まれていませんので、
実質的な失業率はこれをはるかに上回るものと思われます。

失業したり、「下崗」したりした人の生活も大変ですが、
国有企業に残った人の福利厚生も削減される傾向にあります。
3-4年前、中国政府は国有企業の社宅を廃止し、
従業員が今まで住んでいた社宅を
買い取る事を促進する政策を打ち出しました。
これにより、少しでも国有企業の負担を軽くし、
赤字解消に役立てよう、という意図です。

社宅の払い下げ価格は、
余り高くすると従業員が買えなくなってしまうので、
低く抑えられました。
聞いた話では、50平方メートル前後の社宅が、
6-7万元(90-105万円)という破格の値段で払い下げられた様です。
現在、北京市内の新築マンションは
1平方メートル当たり8,000元前後で販売されていますので、
50平方メートルだと40万元(600万円)程度します。
払い下げられる社宅は中古とは言え、
市場価格の1/6程度の価格で販売された事になります。
破格とは言っても6-7万元は、国有企業の従業員にとって大金です。
即金で用意出来ない人に対しては、
分割払いや低利の融資が用意された様です。

この社宅の買い取り促進政策により、
今まで家は「国家から社宅という形で借りる」
というのが常識だった人達の手に、
突然、マイホームが転がり込みました。
土地は相変わらず国家のものですが、
マンションの部屋の中の空間は自分の「所有物」になりました。
この事実に直面し、社宅時代は壁が汚れようが、床が傷もうが
ほったらかしにしていた人達が、
自分の「所有物」になったとたんに、
部屋の中をすばらしくきれいに内装する様になり、
「マイホーム内装ブーム」が起きました。

このブームにより、北京にはたくさんの内装会社が設立され、
汚い外観からは予想も出来ない様な
きれいな内装の部屋がたくさん生まれました。
中には内装に力を入れすぎて、
内装費用が社宅の買い取り価格を上回ってしまった、
という人まで出ました。


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