第93回
中国料理に拘る中国人

現地の日本人だけでなく、中国人の大きなマーケットを狙うなら、
やはり、邱さんのおっしゃる通り中国料理で勝負すべきと思います。
北京にも日本料理の他、イタリア料理、タイ料理、韓国焼肉など、
様々な国のレストランがありますが、
やはり現地の中国人の人たちが外食するとしたら、
ほとんどが中国料理で、
10回に1回ぐらい他の国の料理も食べてみようかな、
という感じです。

中国人の人たちは、私から見ると、
食に関しては非常に貪欲ですが、
同時に、非常に保守的でもあります。
彼らは頑ななまでに、中国料理に拘ります。
確かに中国料理も様々な地方の料理があり、
毎日食べ続けても飽きませんし、
本場の中国料理は安いレストランでも
非常においしいものが出て来ますので、
その気持ちは分からないでも無いのですが、
もうちょっと世界の色々な料理を食べてみたい、とか、
チャレンジしてみたい、
という気持ちがあっても良いのでは無いかと思います。

丸紅時代、中国の取引先の人たちと一緒に
アメリカに出張する機会がありました。
ケンタッキー州レキシントンで仕事が終わった後、
食事をする事になりました。
せっかくアメリカまで来たので、ステーキでも食べよう、
と提案してみましたが、
彼らの答えは「中国料理が食べたい」でした。
理由は「不習慣(ぶーしーぐぅあん)」、
アメリカ料理は食べ慣れないから、という事でした。

レキシントンはケンタッキー州の州都ではありますが、
そんなに大きな街ではなく、
チャイナタウンなどありません。
レンタカーを走らせ、何度も停車して道行く現地の人たちに
「Is there any Chinese restaurant near hear?」と訊きながら、
探す事1時間、やっと街のはずれに
1軒の中国料理レストランを見つけました。
道すがら、おいしそうなステーキハウスが何軒もあったのに。

その中国料理レストランの料理は案の定、
全然おいしくありませんでした。
こんなアメリカの片田舎で華僑がやっているレストランに、
おいしいものを求める方が間違っています。
しかし、同行した中国人の人たちは、
水を得た魚の様に
そのおいしくない中国料理にパクついていました。

私たちの感覚からすると、その土地土地の料理を食べる事は、
海外出張や海外旅行の醍醐味の一つです。
しかし、大部分の中国人の人たちは、
レキシントンに行ってまで中国料理を食べるぐらい保守的です。
そういう彼らが本場中国でも、毎日の様に中国料理を食べる、
というのは、容易にご理解頂けるのでは無いでしょうか。


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