第33回
「人脈」は金で買え(2)

この弁護士は、普段から「弁護士は法律なんか覚える必要無い。
弁護士の実力は「関係」で決まる」と言ってはばからない男で、
「なんといかがわしい弁護士だ」と思っていたのですが、
許可証を「例外」で取ってきた見事な手際を目の当たりにして、
不覚にも私も「もしかして弁護士の実力は
「関係」で決まるのかもしれない」と思ってしまいました。

この男は豪放磊落な語り口とは裏腹に、非常にまめな性格です。
夜はほとんど毎日宴会のスケジュールが入っています。
相手は、裁判官、政府関係者、公安当局、大使館関係者、
他所の弁護士、企業経営者等多岐にわたります。
昼間は依頼者の相談に乗っている時以外は、
ひっきりなしに誰かに電話して、
世間話をしたり、宴会の打ち合わせをしたりしています。

彼を見ていると、「人脈」のメンテナンスには、
多大な時間と労力とコストが掛かる事がよく分かります。
これを自前でやろうと思ったら、
ほとんど本業に手が回らないのでは無いでしょうか。
彼の場合「弁護士の実力は「関係」で決まる」ですので、
一見、いつも遊んでいる様に見えますが、これが本業なのです。
「有言実行」で、ある意味、潔ささえ感じます。

外国人である我々日本人が、
彼と同じ事をやろうと思っても無理ですし、
逆にこれだけの時間と労力とコストが掛かる事は
やっていられません。
この際、「人脈」もアウトソースして、必要な時に金で買い、
普段は本業に注力する方が得策かと思います。
「人脈」を持っている側の人も、
この「無形資産」を如何に「現金」に換えるか、
を常に考えていますので、双方の利害は一致します。

私自身は「人脈」に頼った商売は好きではありません。
前回ご紹介した許可証の取得等、
一発で終わるものなら良いのですが、
長く続く取引の場合、
頼っていた人が失脚して取引を切られてしまったり、
「人脈」に足元を見られて、更に多くの見返りを要求され、
全然儲からない商売になってしまったりするからです。
やはり、「人脈」に左右されない「本当に実力のある商売」を
生み出す事に注力したいです。


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