第717回
競合他社への就職は違法?
会社によっては、退職後2年間は、
競合他社への就職を禁止する就業規則や
誓約書があると思います。
この競業他社への就職を禁止することを
「競業禁止」義務と言います。
競業禁止というのは、
競合他社に就職するばかりでなく、
一般に自分で競業をすることも含めて禁止しているからです。
会社がこの競業禁止を従業員に求めるのは、
企業秘密の漏えい防止です。
企業秘密の主なものは、
開発中の技術や新企画、
ノウハウなどの他に、顧客名簿等の顧客情報があります。
会社にとっては、これらの情報は、
会社の財産であり、収益の源泉ですから、
これらを競合他社で利用されてしまっては堪りません。
しかし、他方、会社の従業員にとっては、
知識経験ノウハウなどが身についているのは、
長年勤務していた会社の業界であり、
転職のときに売りになる部分です。
逆に言えば、それ以外の業界では、
役に立たない人かもしれないのです。
したがって、
競合他社に転職することが禁じられるとすれば、
かなり不利な転職を強いられることになってしまいます。
先日、東京地裁で、
退職後2年以内に競合他社に就職した場合は、
退職金を払わないという合意が有効か無効か
という裁判で、判決が出ました。
判決は、「顧客情報流出を防ぐ目的で、
競合他社への転職を禁止するのは、
方法として過大な制約だ」という理由で、
労働者の職業選択の自由を不当に害し、無効だとしました。
そこで、従業員は、競合他社へ転職しても、
退職金を請求できることになりました。
判例の事案は、
米生命保険大手の日本支店の元執行役員で、
他の生命保険会社の副社長になったというものでした。
過去の判例では、競業禁止規定は、有効とするもの、
無効とするもの両方あるので、
今後、会社が控訴した場合、
最終的にどういう結論となるのかわからない
という中途半端な状態です。
弁護士としては、最高裁まで争ってもらって、
有効なのか無効なのか明確にしてもらいたいところです。 |