弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第693回
弁護士になれるのにならない

これまで何度かお話ししたとおり、
司法試験は、合格者が増加したとはいえ、
大学卒業後、基本的に、法科大学院に入学し、
卒業しなければ、受験資格が得られません。
即ち、司法試験合格には、コストがかなりかかります。

そして、今年の合格率は、約23%ということですから、
合格者の方が圧倒的に少ないわけです。

さらに、司法研修所の卒業試験で、
合格しなければなりません。
このように、弁護士になるためのハードルは、結構高いです。
おそらく、合格者のほとんどは、
弁護士になるために、この高いハードルをクリアしようとして、
費用をかけ、努力をして、合格してきたのだと思われます。

しかし、法科大学院に入学し、卒業し、
司法試験にも合格し、司法研修所も卒業でき、
希望すれば、弁護士になれるという法科大学院生や
司法試験受験生からすると羨ましい立場にいながら、
弁護士にならない人が増えているようなのです。
その原因は、お金にあるようです。

弁護士になるには、
弁護士会に弁護士登録をする必要があります。
登録するのに、6万円(東京弁護士会の場合)、
なりたてでも、弁護士会の会費が月額1万8200円、
年間21万8400円(第一東京弁護士会の場合)を
支払わなければなりません。

僕は、弁護士18年目ですが、弁護士会費は月額3万8700円、
年間46万4400円を支払っています。(第一東京弁護士会です)

弁護士になると、弁護士会費を支払わなければならないので、
法律事務所に就職できず、
あるいはすぐに弁護士になっても
それに見合う収入が得られる見込みがない人は、
弁護士会費を払わないために、
弁護士になれるのにならないということのようなのです。

もちろん、弁護士登録をしなければ、
弁護士としての仕事をすることはできません。

弁護士になろうとして、費用をかけ、努力をしてきた人が、
弁護士になれるのにならないなんて、
ちょっと切ない感じがします。
弁護士にならずに、何をして生計を立てているかは
興味があるところではあります。

これが、弁護士業界の現状で、
合格者は毎年生まれて行きますから、
今後は、もっとひどくなることが予想されます。


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2011年10月25日(火)

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