第646回
交渉で解決が理想ですが
弁護士に対する依頼者の中には、
裁判になると時間も労力もかかるので、
交渉で解決してくださいという方がいます。
誰だって、時間や労力をかけて裁判をしたい人はいません。
もちろん、依頼を受ける弁護士だって、
交渉で、早期に解決した方が良いと思っています。
時間いくらで弁護士費用をもらう弁護士は、
裁判をした方が良いと思う人がいるかもしれませんが(冗談です)。
しかし、まともな弁護士ほど、
交渉で解決しますとは約束をしないと思います。
交渉は、裁判と違って、強制力はありません。
したがって、交渉するかどうかさえも、相手の自由です。
それに、いくらこちらが法律の理屈に合った請求をしても、
相手が嫌だと言えばそれまでです。
そこで、相手が理屈に従って話せばそれに従う人であるケース、
あるいは、こちらの提案する案が
相手にとってメリットが大きいケースであれば、
交渉で解決する可能性がありますが、
それ以外のケースでは、交渉で解決することは難しいです。
しかし、相手が理屈に従って話せばそれに従う人であっても、
相手の考え方や証拠の評価の仕方では、
違う結論になるケースでは、交渉では解決しません。
また、こちらの提案が相手にとってメリットが大きい場合でも、
相手がそれ以上のメリットや利益を求めていると、
やはり交渉では解決しないのです。
それに、交渉は、いくら長くやったとしても、
まとまる保証はありません。
しかも、時間をかけてやったとしても、裁判になれば、
その交渉は、ほとんど役に立たないことが多いです。
交渉でも書面や証拠をやり取りすれば、まだ裁判で役に立ちますが、
交渉ではそういうことをしないことの方が多いと思います。
このようなことから、
まともな弁護士ほど交渉で解決することを約束することはしないし、
交渉で解決したいと思いながらも、
裁判で解決を図らざるを得ないのです。
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