弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第642回
地震で賃貸建物の一部が壊れた

今回の地震では、津波などで、
建物全部が壊れたというケースも多かったと思いますが、
それ以上に一部壊れたというケースも多いと思います。

自分で所有して、自分で使っているというのであれば、
自分で好きなように直せばよいということになります。

しかし、自分の所有ビルを、
会社などに賃貸しているケースでは、
貸主と借主のどちらが直すのか、
直すとして、勝手にやってよいのかなどの問題が発生します。

賃貸物件の修理については、
基本的に、貸主が行う義務があります。

その対象は、使用するのに必要な部分となります。
だから、地震で壊れた部分を修理しないと
使用に支障をきたすような場合に、
貸主は賃貸物件を修理しなければなりません。

逆に言うと、壊れたからと言って、
建物の使用に支障が生じない部分については、
貸主は、必ず修理しなければならないというわけではないのです。

この建物の使用に支障が出るかどうかについては、
口で言うのは簡単ですが、
実際問題としては、どういう場合が使用に支障をきたすかは、
なかなか難しいところがあります。

裁判でも、通常の雨では雨漏りしないけれども、
台風のような大雨が来ると雨漏りするというケースで、
使用に支障があるのかが争われました。
判例では、使用に支障をきたすとされました。

貸主が必要な修理をしないときは、
借主は家賃の支払いを拒むことができますが、
全額を拒めるわけではなく、
使用できる範囲では、家賃を支払わなければなりませんので、
借主が賃料の支払いを拒むときには注意が必要です。


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2011年4月7日(木)

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