第608回
スポーツも科学と法律の時代
スポーツというと、
指導者や先輩の言うことは絶対の上命下服の世界
というイメージを持っている方も多いかもしれません。
今でも、そういう点がないとは言い切れない部分もあります。
しかし、社会が成熟してくると、
やはり、スポーツの世界だけ、
一般の社会から切り離された別世界というわけにはいきません。
事故が起きれば、
スポーツの指導者などに責任が発生してしまいます。
社会は進歩しており、
「昔はこうだった」あるいは
「昔からこうされている」ということは、
なかなか通用しない時代となってきています。
そんなことを踏まえて、
先日、ジュニアスポーツの安全・安心フォーラム
「科学的で安全なジュニア期のスポーツ指導」
というシンポジウムが開催され、僕も参加しました。
その中で、取り上げられたことは、
たくさんあり、興味深い話もあるのですが、
残念ながら全部には触れられません。
その1つとして、熱中症を取り上げましょう。
以前は、スポーツの練習中に「水を飲むな」
と指導されていた世代の方もいると思います。
しかし、練習中に熱中症で選手が死亡して、
民事的に、損害賠償責任、
刑事的には、業務上過失致死罪の
責任を問われた裁判例もあります。
現在では、選手を熱中症にさせないためには、
練習中に必要に応じて水分
(できればスポーツドリンクの方が望ましいそうです)
を取らせる必要があり、必要性を判断できない子供の場合は、
指導者が定期的に水分を取らせる必要があるそうです。
そして、気温や湿度が高く選手に危険な場合は、
練習を中止すべきとされています。
昔、スポーツをしていた僕からすると、
隔世の感がありますが、
今はこれが常識で、これに反した指導をしていていると
事故が起きてしまう可能性があり、
事故が起きると指導者が責任を問われてしまうこととなります。 |