第557回
今度は過労死で社長に賠償責任
この前、パロマ事件で、
自社の製品には欠陥がなく、他人が改造したことが原因で、
事故が起こった場合でも、
社長が刑事責任を負うとされた
というお話をしました。
今度は、自社の従業員の過労死について、
社長個人に賠償責任を認める判決が出ました。
どういう事案かと言いますと、
全国チェーンの居酒屋で働いていた男性社員(当時24歳)が、
4月に入社して4ヵ月後の8月に急死したというものです。
その時間外労働時間は、
月平均で100時間を超えており、
厚生労働省の作成した過労死の基準である2ヶ月以上にわたって
月平均80時間以上を超えていました。
過労死については、通常は、労災であるか、
あるいは、雇い主である会社の責任があるかどうかが争われます。
社長個人の責任を問われるのは、極めて珍しいです。
しかし、社長は、会社の最終意思決定権者であり、
会社の経営は社長の意志に基づき行われることが通常ですから、
会社が違法行為をすれば、
社長個人の責任が問われる可能性があるのです。
社長の個人責任を認めたポイントは、
この会社の就業規則にありました。
賃金体系が1ヶ月に80時間の時間外労働をしないと、
給料が下がる仕組みになっていたようです。
要するに、厚生労働省の定める
過労死の基準を上回る時間外労働をしないと
給料が下がってしまうということですから、
従業員は給料を下げないために、
過労死する可能性がある時間外労働をするのは当然で、
そのような仕組みを作って働かせていたのは、
会社に責任があるのはもちろんのこと、
会社の最終意思決定権者であり、
最高責任者である社長個人にも責任があるということです。
現在は、この会社は、
前記のようなひどい内容の就業規則は修正したようです。
会社において、社長は最高権力者ですが、責任も重いのです。
社長のみなさん、
会社が利益を上げられれば従業員や
第三者が犠牲となっても良い
というような考え方で経営していると、
自分の責任に跳ね返ってきます。
ご注意ください。 |