弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第553
商品に欠陥はないのに刑事責任

最近、みなさんに
知っておいてもらった方が良いと
思われる判決などが続いているので、
このコラムで取り上げるテーマに悩まないですみます。

さて、今回は、パロマ事件について取り上げます。
パロマ事件というのは、
パロマのガス湯沸かし器については
商品自体に問題はなかったけれども、
修理業者が安全装置を作動しないよう改造するケースが相次ぎ、
その結果、死亡者が何人も出たというもので、
当時の会社の品質管理部長と
社長が業務上過失致死罪に問われたものです。

この事件のポイントは、
パロマの製造した商品自体に欠陥がなく、
しかも安全装置が付いていて、
この安全装置を作動しないようにしたのは、
パロマではなく、修理業者が勝手にしたということです。

普通であれば、
事故は、不正に改造した修理業者の責任で、
メーカーであるパロマの責任は問われません。

しかし、今回の判決では、
裁判所は、それまでにも死亡事故が起きていたことから、
パロマは、事故の予見が可能であったにもかかわらず、
点検・回収などの事故回避のための抜本的な対策を怠ったとして、
当時の品質管理部長と社長を、
執行猶予付きながら有罪としました。

新聞報道では、パロマが大企業であることや
死亡事故という重大な結果が起きたということもあって、
判決が正しいという意見が多いようでした。

同様の事故が複数発生した場合は、
放置すると事故は継続して発生してしまうので、
何らかの対策は必要だったとは思います。

しかし、問題なく製造して販売した商品が、
その後に他者の手によって不正改造された場合に、
メーカーが自らの費用で、点検したり、
回収したりしなければならない義務があるとするのは、
メーカーの自己責任の範囲を超えて、
重すぎるような気がします。

メーカーにとっては、
かなり厳しい判決だと思います。


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2010年5月20日(木)

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