弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第545回
ライブドア元社長の差押は停止

度々、同じ話題を取り上げて済みませんが、
今回もライブドアの元社長の財産に対する差押の話です。

みなさんは、強制執行の話なんて、
自分が差し押さえるか、
差し押さえられるかの当事者にならなければ、
興味を持たないでしょうし、
ましてや、その停止をどうするかは、
差し押さえられてみないと、関心が無いと思います。

だから、今回のように、
みなさんが関心を持ってくれる有名人のケースが出てきたときに、
お話ししようと思います。

新聞報道によると、
ライブドアの元社長の家具などに対する差押は、
停止されたようです。

みなさんは、差押をされても、
停止ができるなんて便利と考えられたか、
差押をしても停止されたら意味が無い
と考えられたかのどちらでしょうか。

差押の停止ができると言っても、
無条件に、無料でできるわけではありません。

ライブドアの元社長のケースは、
一審判決が出て、控訴中で判決は確定していません。
みなさんの中には、判決が確定するまでは、
差押はできないと思われている方もいるかもしれません。

しかし、通常の判決では、控訴や上告などで、
被告が差押を受けるのを引き伸ばそうとしてもできないように、
判決で勝訴した場合には、
仮執行宣言という判決確定前に差押をしてよい
ということが書かれています。

これに基づいて、控訴中であるにもかかわらず、
一審で勝訴した原告は、
被告の財産を差し押さえて換金することができます。

しかし、控訴中で、争っているのですから、
被告も無条件に、
自分の財産が換金されてしまってはかないません。

そこで、控訴をして争っているときには、
差押を停止することができることとなっています。

ただし、無償ではありません。
一審で敗訴しているということだと、
一般的には、二審でも敗訴する可能性が高いわけで、
一審判決で認められた金額の8割くらいのお金を担保
として供託する必要があります。

ライブドア元社長の件は、
一審判決で認められた金額の約6割ということですから、
通常よりは低めの金額のような気はします。
高裁は、一審判決が認めた額は、
ちょっと高いと思ったのかもしれません。

差押をされても止められるなんて便利
と思った方がいたかもしれませんが、
担保としてお金が無いと止められませんので、ご注意ください。

ただ、一審で敗訴して、
家を差し押さえられてしまったようなケースでは、
控訴して、担保としてお金を積んで差し押さえを止めてもらう
という方法は有効ですので、
覚えておいた方がよいと思います。


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2010年4月13日(火)

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