第523回
「使い込み」で相続が揉める
相続が揉める原因について、
以前、「長男の優遇」があるということをお話しました。
相続が揉める原因は、それだけではありません。
相続人の1人が、亡くなった方(被相続人)の預金を下ろして
使い込んでいたというケースも、
よく相続が揉める原因となります。
一般的に、亡くなるのは、高齢であることが多く、
亡くなる直前はあまりお金を使いません。
特に、病気がちだとすればなおさらです。
しかし、いざ亡くなってみると、
預金はたくさんあったはずなのに、
ほとんど残高が無くなっているというケースは結構あります。
そういうケースでは、
同居していた相続人が使い込んだのではないかということで、
他の相続人との間で、トラブルとなります。
もし、相続人の1人が亡くなった方
(例えば、お母さん)に無断で、
預金を使い込んでいたとすれば、
使い込んでいたお金を返さなければなりません。
お母さんは亡くなってしまっているので、
自分も含めた相続人全員に
使い込んだ分を返すということになります。
また、もし、上の例で、
お母さんの承諾を得て預金を使っていたとしても、
それは生前贈与があったこととなりますから、
特別受益として、
既に、その分は遺産をもらったこととなります。
承諾があったか、なかったかにかかわらず、
相続人の1人が使い込みをしていれば、
相続する遺産はそれだけ減ることになります。
そこで、この使い込みを巡って、
揉めることが多いのです。
この点、使い込みがお母さんの亡くなる直前になされていれば、
銀行に払戻書などの提出を求めて、
預金を下ろした人物を特定することもできます。
しかし、預金を下ろしたのが、10年も前で、
しかも、その当時は、お母さんがまだ元気で
自分でお金を下ろせる状態だったという場合には、
使い込んだ相続人に
「お母さんが自分で下ろして使ったのだろう」
と逃げられてしまうと、
裁判で、同居の相続人が使い込んだ
ということを立証するのはなかなか難しいです。
このようなことがあると、感情的にも、
遺産分割について話合いで解決するのは難しくなります。 |