弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第520回
完成直前で建築確認取消し

昨年末のニュースになりますが、
完成間近の3階建てのマンションについて、
最高裁が建築確認の取消を認めた
ということが、話題になりました。

事案は、新宿区の出した建築確認に基づいて、
マンション開発業者が、マンションを建築していたところ、
マンション建設に反対する住民が
建築確認の取消を求めて訴訟を起こしたところ、
反対住民の主張が認められて、
建築確認が取り消されたというものです。

裁判上の争点は、いくつかありますが、
大きなものは、東京都の条例によれば
予定していたマンションを建てるには、
災害救助や避難のために、
少なくとも8メートルの幅のある通路が
必要であるにもかかわらず、
新宿区は、災害救助や避難に支障がないとして、
約4メートルの幅の通路があることで、
建築確認を出したことが、
合法か、違法かというものでした。

新宿区は、避難場所に変わる中庭があることや
4メートルの通路があること、
道路に接している部分は8メートル以上あることなどを理由に、
建築確認が合法であることを主張しました。

しかし、中庭は避難場所と言えるようなものではなく、
その他8メートルの通路を要求する
条例の例外を認めるような
安全上支障がないと言える根拠はない
という理由で、裁判所は、建築確認を取り消しました。

マンション建設に反対する住民は、
タヌキの森と呼ばれる住環境を守るために、
本件訴訟を起こしたようですが、
判決の内容は、住環境を守るためではなく、
災害救助や避難のために支障がある
という理由で建築確認を取り消したのです。

ただ、マンション建設に反対する人たちがいなければ、
万が一のときに災害救助や避難に支障がある
違法なマンションが建ってしまっていたということになります。

しかし、逆に、このような判決が出てしまうと、
取消をおそれて、役所の方が
建築確認をなかなか出さなくなってしまうおそれがあり、
それはそれで、耐震偽装のときのように、
建設不況に拍車をかけることになりかねないことを
心配してしまいます。


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2010年1月12日(火)

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