第454回
刑事事件の示談が難しい理由
前回、刑事事件の示談も基本的には
被害者の損害を賠償することなので、
民事事件として損害額を計算して賠償するという話をしました。
しかし、なかなか民事事件の賠償額を提示しただけでは
示談はできません。
その理由は、加害者が逮捕されているときは、
示談までのタイムリミットがあるということです。
加害者が逮捕されていない状態であればいいのですが、
加害者が逮捕されてしまっていると、
示談ができるまでは、
釈放されない可能性があります。
また、初犯の場合一定期間までに示談ができれば、
罰金にもならずに釈放される可能性もありますが、
示談ができないと罰金になってしまう可能性があります。
一定期間までに示談ができれば罰金で済む可能性があるところ、
示談ができないと正式な刑事裁判を受けなければならない
という可能性もあります。
罰金の場合、略式手続という書面審理で、罰金を科されて、
それを支払って身柄が早期に釈放される手続があります。
(ただし、罰金でも有罪は有罪で、前科と言えば前科となります)
したがって、加害者が逮捕されている場合、
加害者がより早くより軽い処分を受けて釈放されるために、
早期に被害者と示談する必要があります。
しかし、当たり前のことですが、
被害者は、殴られた直後は、
加害者に恐怖を感じているとともに
憤りを感じている場合が多いです。
そういう状態で、加害者とすぐに示談をして、
加害者を許すという気持ちにはなれません。
被害感情から加害者にも
加害者の弁護士にも会いたくないという人もいます。
賠償はしてもらいたいけど、
刑事罰は受けて欲しいと思っている被害者も多いです。
ケガの後遺症を心配する人もいますし、
加害者が逮捕されていることに付け込んで、
多額の賠償金を吹っかけてくる人もいます。
また、被害者と比べたら、加害者の方が悪いですから、
示談の話をするにも、
被害者の都合に合わせる必要があります。
このような事情から、短期間のうちに、
被害者と示談をまとめるのは、
なかなか難しい仕事になります。
早期に示談をまとめるために、
示談金あるいは慰謝料という形で、
民事の損害賠償額に金額を上乗せして払うことも多いです。
上乗せ金額は、被害の程度によりますが、
2週間程度であれば5万円から10万円程度が妥当かと思います。
しかし、示談がまとまるかどうかは被害者の考え方1つなので、
加害者がいくら合理的な提案をしたとしても、
まとまらない場合があるのです。
まあ、被害者が不合理なことを言って示談がまとまらない場合は、
加害者に不利になるとは限りませんが。 |