弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第378回
司法試験合格者も基礎知識が欠けている?

前回、今の大学生の基礎学力が欠けている
という新聞記事について、お話ししたところ、
今度は、司法試験合格者も
基礎知識が欠けているという新聞記事が載っていました。

僕が読んだのは、日経新聞の記事です。
まず、法科大学院を卒業して、
司法試験に合格すると、
司法研修所というところで、
1年間、弁護士、裁判官、検察官の見習として、
実際の事件処理を体験しながら学びます。

そして、この司法研修所の卒業試験に合格しないと、
弁護士にも、裁判官にも、検察官にもなれません。
最近、司法試験合格者が増加するにしたがって、
この卒業試験不合格者が増加しています。

今回、最高裁判所が、
この不合格者がどういう理由で
不合格となったのか公表したのです。
その中で、一番驚いたのは、
「相殺」(「そうさい」と読みます)、
「手付金」について、
理解していなかった不合格者がいたことです。

おそらく、みなさんの中で、
法学部を出ていない方でも、
相殺や手付金の仕組みについては、ご存知でしょう。

それが、法科大学院を卒業し、
司法試験に合格したにもかかわらず、
このような基本的な法律制度について
正確に理解していない者がいるということです。

司法試験合格者500人から600人で
司法試験が難しいと言われていたころには、ありえない話です。
(現在は合格者が2000人を超えています)

法科大学院では、
基礎知識よりも、
実務で役立つ応用問題を多く取り扱います。
しかし、どんな分野でも、
基礎知識がなければ、応用問題は解けません。

試験で、あまり細かい法律知識を問うのは、
意味がありませんが、
社会でよく使われる「相殺」や
「手付金」の法的な知識がわからなくても、
司法試験に合格してしまうというのは、
かなり問題だと思います。

ずっと前に
「法科大学院はゆとり教育の二の舞か」
と懸念したことが、
本当のことになっているようです。





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2008年7月29日(火)

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