第332回
どうして急に親の面倒を？

相続・遺産分割の相談を受けると、
それまで、実家なんて省みたことがない兄弟が、
父親あるいは母親が倒れた途端に、
急に実家に戻って自分が親の面倒を見ると
言い出したということが、往々にしてあります。
物事を善意的に解釈すれば、
それまで、実家や両親を省みずに生活してきたことの反省から、
弱った両親の面倒は自分が見るということで、
美談となるわけです。

ところが、そこは、
弁護士のところに相談に来るケースなので、
そのような美談で終わりません。
話を聞いてみると、
大体、下記のような話になることが多いです。

(１)その兄弟が親の面倒を見ることになってから、
親の預金から使途不明なお金が下ろされていた。
(２)親からその兄弟宛に遺産を相続させる
という遺言が書かれていた。
(３)その兄弟は、親の面倒を見たのだから、
遺産は自分のものだと主張している。
(４)その兄弟が、親の遺産に何があるのか他の兄弟には教えない。

要するに、疎遠になっていた兄弟が
急に親の面倒を見ようと言い出すときには、
多くは親の財産目当てのことが多いのです。
それでも、お父さん、お母さんが、
その兄弟に面倒を見てもらえたおかげで
幸せだったということであれば、
遺産はお父さん、お母さんのお金ですから、
他の兄弟がとやかく言う問題ではありません。
しかし、実際は、お金目当ての兄弟ほど、
お父さんやお母さんのために、
お父さんやお母さんのお金を使ったりしないのです。

お父さんやお母さんが亡くなってから、
トラブルとならないように、
１人の兄弟に任せきりではなく、
お父さんやお母さんが生きている間に、
財産をきちんと管理するように話し合いをしておいた方が、
後で後悔しなくて済みます。