弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第292回
支払いを免れる行為

相手方から、お金を請求されたときに、
どうしても支払いたくないという理由から、
持っている土地建物の名義を変えようとする人がいます。
しかし、その名義書換が実体を伴わない仮装のものであれば、
強制執行妨害罪(刑法96条の2)で、
犯罪行為となります。

また、対価をもらわずに、
名義を変更すれば、贈与となり、贈与税がかかります。
これらは、刑事や税金上のペナルティです。

それでは、名義を変えれば、
お金を請求されたときに、民事手続の中で、
差し押さえなどを免れるかと言えば、
必ずしもそうではありません。

債権者は、名義変更を取り消して
元の所有者の名義に戻すことができます。
これを「詐害行為取消権」と言います。
ただ、詐害行為取消権は、
名義変更をした人が、名義を変更したら、
元の名義人の債権者が困る
ということを知っている必要があります。
だから、妻や子供などの身内に名義書換をすれば、
事情を知っていると言いやすいです。

贈与された、あるいは、
通常の代金よりも安く購入していれば、
そんなの不自然ですから、
事情を知っていると認定される可能性は大きいです。
したがって、これらの事情があれば、
詐害行為取消権は威力を発揮します。

しかし、全くの第三者に、
適正な金額で売却したような場合には、
購入した第三者は、
債権者がそれによって回収できなくなる
ということを知っていたとは言えないでしょうから、
詐害行為取消権を行使することはできません。
その場合には、受け取った代金に対して、
差押えをされる可能性があります。

代金の行方がわからないということであれば、
債権者から破産の申立をされる可能性もあります。
請求を受けたときに、
安易に土地建物の名義書換をして
差押えを免れようとするのは、
なかなかうまく行かない場合も多いです。





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2007年9月25日(火)

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