弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第177回
賃貸物件の原状回復費用は誰の負担?

ビルやマンションを貸した場合、
借主が特に壊したり、
汚したりした部分の
修繕費用を借主が負担することは、
当たり前のことで、争いのないところです。
もちろん、貸したときに、
付いていなかった設備が
取り付けられていたりしたら、
これを取り外す費用も、
借主負担となります。
賃貸物件を返してもらうときの
いわゆる原状回復費とは、
これらの修繕費用ということとなります。

この原状回復費の解釈を巡って、
トラブルとなるのは、
壁や天井のクロス、床シート、畳などを
長年使用している間に汚れたり、
色が変わったりした部分について、
貸主、借主のどちらが負担するかということです。
これらは、「通常損耗」と呼ばれています。
この「通常損耗」について、
賃貸借契約書上、何の記載もない場合は、
これらの修繕費用は、貸主の負担となります。

契約書に、単に「原状回復費用は、
借主の負担とする」と書かれていても、
この原状回復費用には、
「通常損耗」は含まれないので、
「通常損耗」の修繕費について
借主が負担すると書かれていることにはなりません。
トラブルになり、裁判上争いになっているのは、
「壁や天井のクロス、床シート、畳などの
「通常損耗」の修繕費は、
借主の負担とする」と契約書に書かれている場合です。

この場合、契約書に明確に書かれており、
当事者が納得して契約したのだから、
有効とも言えそうです。

しかし、他方、
本来、貸主が負担するものなのに、
借主が負担することとなるのは、
不公平とも言えそうです。

貸主は、賃貸借契約が終了したときに、
「通常損耗」の修繕費を
借主から預った敷金や保証金から
差し引くことによって、回収します。
そこで、借主が、貸主に対し、
敷金や保証金を返せという
訴訟を起こす形で争われることとなります。
これについて、最高裁判所が、
1つの結論を出しました。


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2006年8月1日(火)

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